その剣幕が、月子にしては珍しかったのか、店の客が、一瞬、シンとなる。
若干の険悪な雰囲気に、お登勢が近寄ってくる。
「なんだい、客とケンカかい」
「いや、この男、・・・。もう帰るそうです。お勘定を・・・」
オイオイオイオイ!!!
「さっき、一本追加で頼んだビールをまだ飲んでおらぬ」
「なんだい、何があったのか言ってみな」
この方は、さすが四天王。分かる人だ。
「拙者、月子殿のご子息・松之助殿の実の父親の部下で河上と申す。今日は、あの人の使いではなく、個人的に月子殿にお願いに参った次第」
「なんだい?」
「あの人に、連絡を取って頂きたい」
ああ、そういうこと・・・と、煙を吐きながらお登勢は以外にもあっさり言った。
「あの男が、焦る面、さぞかし愉快だろうねえ」などと、楽しそうに笑っている。
「ご存じなのか?」意外!拙者だけでなく、驚いて月子もお登勢を見る。
「いやね・・・まあ、話さないでおこうと思ってたんだけど」と、月子を見る。
「松坊が入院した時、あたしが病院に行ったら、病室にいたんだよ、あの男が。高杉と言ったか、あんた達は気付いてなかったようだけど。
よく寝てて。少し、茶をしながら話をした」
ふうーーと、煙を吐く。まるで、そのときを思い出すかのようだ。
「ありゃ、危険な男だね。底がみえやしない。・・・でもね、私はあの男、意地っ張りなただの男にも見えたねえ。
あんたや松坊を大切に思う気持ちは、本物だと思ったがね。最近、あんたが連絡を取ってないようだから、心配はしていたが。
何も言わずにってんなら高杉って男の方も、焦っているはずさね。河上さんとやらが不安でここに来るくらいには」
なんと!さすが、四天王のお登勢!拙者の言いたいことを全て代弁してくれたでござる!
と、喜んだのも束の間。・・・