>>424 余談 一回目の訪問
スナックお登勢に、立ち寄ったのは、金曜日の8時くらいだったろうか。
金曜の、ここは込んでいる。カウンター一席しか開いていない。
そこへ、猫耳のなにやら不思議な女に案内される。
裏から、美しい女がやってきて、どうぞ、と、水とおしぼりをくれた。
瞬間、拙者の顔を確認して、あからさまに嫌な顔をする。
変わらない、いつも通りの、“月子”だった。
で、「ご注文は」と言った。
「ビールをお願いするでござる」
後ろに行って、なにやら猫耳女に耳打ちする。
それから、桂がビールをつぎに来ることもなく、猫耳女が拙者の前に来ては世話をやいた。
あちこちで、
「月子ちゃ??ん、こっちもう一本」などと、声がする。
月子は、この店で大人気だ。
もっとも、前と違って、今は人妻。子供の母親。それをみんな知っている。
だから、色を求めてと言うより、美と癒しを求めてきている客ばかり。
それを知っているから、白夜叉も、お登勢も、毎週金曜だけはこの月子をピンチヒッターとして狩りだしている。
(そういえば、家賃代の代わりなのかもしれぬ。金は渡したはずなのだが・・・)などと思っていると、ビールがカラになった。
「月子殿、拙者にもう一本同じものを」
といって、わざと月子を指名する。
「はーい」と返事はしたが、持ってきたのは猫耳だ。
らちがあかない。