【空知英秋】銀魂 二百十四訓

このエントリーをはてなブックマークに追加
415名無しさんの次レスにご期待下さい
もう、彼女は泣いていない。嬉しそうに顔を赤らめている。

心は決まっているだろうに、隣の二人と顔を見会わせる。二人の手前、素直に行けないのだろう。

さっき息巻いていた一人の子が、「どうするの、すず」と言った。ああ、鈴という名前だったのか。初めて知った。



そのやり取りを、高杉はややつまらなそうにちらっと見て、こちらに視線を送る。・・・お前、面倒ごと嫌だって言ってなかったっけ?

俺は言いつけ守って部屋にいたのによう・・・と、若干すねているように、拙者は感じた。それが、あっているかどうかは分からないが。



すこしして、「ごめんね、みんな」と言って、高杉のところに鈴が歩み寄る。

「来な、すずサン」と、その腕を捕る。あ、晋助、主も今、その名前知っただろう!

それから、拙者の方をちらっと向いた。

「部屋聞いて、払っとけ」

「承知したでござるよ」

「それから」

「は」

「万斎、てめえは、もう、寝ろ」

と言って扉を閉めた。


まいったな・・・。

あの人は、この後も、自分がこの部屋の前に立てば間違いなく、また途中でも部屋から出てくるだろう。

だが、できれば、急用がない限り来て欲しくない、と言っている。

そりゃそうだろう。いくらなんでも、二度はあの子もかわいそうだ。

まあ、きっと晋助は自分が面倒だからそう言ったのだろうが。

そんなの、釘を刺されるまでもなく、分かってるでござるよ。



さて、女の子達に、

「部屋番号教えてもらってもいいでござるか?迷惑かけたお詫びに、この宿代は拙者達で払わせてもらうでござる」

といえば、とたん。

「え・・いいんですか」

などと、好意的になる。まったく、女という奴は。さっきまであんなに不満を言って息巻いていたというのに。

ここの宿代は安くはない。きっと、あの子達も“ラッキー”程度に思っているだろう。

しかし、この単純さを差し引いても、丸く収めるコツを良く心得ていらっしゃる。