「いいから、つれてけや??」松平の声がした。そのとたん、震える手で左ほほを押さえていた当の将軍が、動いた。凛とした、いつもの声で言う。
「はなしてあげなさい。たたかれたのは、突然触れてしまった私が悪いのだ。・・・すまなかった」
と、なんと将軍が月子に深々と頭を下げたのだった。
「う、上様!!」真撰組がどよめく。
「貴方の言う、侍を見捨てた件、先代の将軍、父の所行だとしても、私も実は心を痛めている。償うためには、
この平和を守ることしか私には出来ないが、きっと、それをしてくつもりだ。」
将軍の目は、真剣だ。そして、真摯に桂を見据えていた。
その顔には、本当に確固たる、決意がみなぎっている。
桂と、将軍の視線は絡んだまま。他の誰もが、それを見て、何も言えない。二人が、言葉を発さず、目で語り合っているような気がしたからだった。
にらむように、将軍を見続けていた月子の身体から力が抜けた。銀時も、事の成り行きを悟り、嫌に冷めた目で将軍を見た。心中は、複雑だ。