>>399 余談 慰安旅行3
【万斎】
拙者が、一人になってから割とすぐに、月子は意識を取り戻した。
「あ。・・・???!!」
「気付いたでござるか」
ぱっと、拙者の腕から起きて、何事か、と言う顔をする。
「先程、意識のない月子殿をこの男が抱えているのを見て、晋助が助けたでござるよ」
「た、高杉が????」
足下の男を指し示すと、あからさまに驚く。
「うわっ!」
「立てるでござるか?長居は無用。速く白夜叉殿の部屋に戻るが良いかと」
こくこくと頷く桂。
支えながら、廊下に戻る。
売店の前を通った時、あっと何かを思い出したように桂が立ち止まった。
「高杉はどうした?」
「晋助なら、部屋に戻ったでござるよ」
「そ、そうか・・・また世話になってしまったな」
「まあ、貴方に対しては、特別でござるよ」
と、言えば、不思議そうな顔でこちらを見る。・・・なんとも、きれいなお方だ。桂だけど。
しかし、心なしかやはり顔色が悪い。速く部屋に戻さねば。
「歩けなければ、抱えるでござるが・・」
「いや、いい!・・・そうじゃなくて、これを」
ごそごそと、拙者が持っていた桂の袋から、一つの包みを取り出した。
「奴に・・・誕生日だろう」
「晋助にでござるか?」
「ああ・・・色々と世話になっているしな・・・あの、あれだぞ。そんな深い意味はないからな。
ただ、まあ、思いつきだ。たいしたものでもない」
などと、あたふたしながら渡してくる。なかなかこの表情は可愛い。
「では、確かに。引き受けたでござる」
桂が、ちょっと、はにかんで嬉しそうな顔をした。
それから、徐々にしっかりした足取りで、階段を上り、二階に来た時、突然。
うっ・・・と言って、口元を抑えた。なにやら吐き気を催しているようで、持っていた袋の荷物だけを出して袋を桂に渡す。
はあはあと息をしながら、吐き気に耐える桂。結局、戻さずに終わった。
しかし・・・
これは、ただの湯あたりではないな。
「月子殿・・・これは拙者の勝手な憶測でござるが」
ビクッと桂の身体が揺れた。
ああ、きっと、この先言われることを予想しているのだろう。
「もし、貴殿に今お子が出来たとしたら、晋助の子の可能性はあるのだろうか」
ない、とは思う。思うが、確信はない。知りたかった。これ以上、惑わされるものが出来るのはごめんだ。もし、頷かれたら・・・自分はこの人を蹴り上げてしまうかもしれない。
だが、桂は、力無く首を横に振る。
「それは・・・絶対に、ない」
ほっとした半面、・・・得体の知れない嫌な予感もする。
と言うことは、白夜叉の子だ。それはそれで、危険な気もする。