「万斎、ちっと散歩にでもいかねえか。暇で仕方ねえ」
「・・・いいでござるよ。お供致そう」
一階の、売店近くを通って、廊下を進む。中庭に、ベンチがおいてある。
そこに行こうと思っていた。
ところが、そこには先客が居た。
何か、見覚えがあるような・・・
見れば、髪の長い女と、体格のいい男。カップルか?と思った時、意外にも、つかつかと高杉がその二人に近寄るので驚いた。
どうも、女の方は眠っているらしく、不自然に男に身体を預けている。
「兄ちゃん、何してんだい」
高杉が声を掛けると、男の方はビクッとなる。
万斎も聞きたくない、敵意むき出しのときの声だ。
「だ、誰だ、あんた・・・」
高杉のただならぬ雰囲気と、その威圧に、怯える男。
「てめぇごときが触れていい奴じゃねえよ、そいつは」
言うが速いか、女を抱いていた腕を掴んで、男の顎を強打し、すっ飛ばした。
あちゃ??!
男は、その場で動かなくなった。脳しんとうを起こしたに違いない。
「晋助・・・」
高杉は構わず、その女の頬を優しく叩く。
「う??ん・・・」とは言うが、意識はもうろうとしているようだ。
月明かりに、はっきりと、その顔が見えた・・・
桂。