「・・・承知した。その10人も武市殿とともに選出するでござるよ」
「頼んだぜ、万斎」
“頼んだぜ”
その短い言葉で、簡単に喜ぶ自分がいる。
その言葉を、もらえる人間が本当に少ないことを知っているからだ。
いや、あえて彼がそうしているのかもしれないが。
この男は、こうやって、人の心を簡単に掴んでしまう。そして、捕まれたら最後、惹かれて、やまない。
一応の話が終わり、帰ろうとした時、思い出したことがあった。
「・・・そういえば、白夜叉に風呂場で会い申した」
「は?」
「奥方と一緒に」
「・・・・」
「おおかた、新婚旅行でござろうか」
「へえ・・・」
「用心のため、脱衣所で確認したところ、部屋番号は202でござる。こちらの部屋のことはひとつも言っていないでござるよ」
「・・・」
「先程、・・・途中で中断してしまったのは拙者が悪いかもしれぬが、ゆめゆめ面倒はごめんでござる。今日は、めでたい誕生日故」
「ああ?なんの心配をしてるんだ。奴らのことなんか関係ねえ。女の代わりもいらねえよ」
では、と、部屋を出ようとした時、珍しく呼び止められた。