>>386 「突っ立ってないで、入れや」
どうも、女を追い出すのに今までかかったようだ。
「別に、追い出さずとも良かったのに。拙者は後でも」
「ずっと部屋の前にいながら、よく言うぜ」
「泣いていたでござるよ」
「ああ?鳴き声はうるさかったが。十分満足したんじゃねえかな」
「晋助は、途中だったのでは」
「俺はいい。いつものこったろうが」
別段、気にもとめずそういって、「で、なんだ」と用件を促す。
やれやれ。
万斎は、先程騎兵隊から連絡があった件を手短に放した。全てを聞いた後、すかさず、
「どう思う?」との意見を求められ、自分の意見を言う。この男は、いつもそうだ。自分の意見を求めてくる。
終始、目を細め、歪ませた笑みを浮かべながら、「てめえは相変わらず聡いな」と、言う。
ああ、たまらない。
この男の、こういうところ。
そして、決まってその後で、自分の考えの上を言う。
「まあ、加え言いえば、家持を使って竈を壊させたら完璧だな。家持ちには息子が居た。ありゃ相当などら息子だ。2??3人当てりゃ堕ちんだろ」
「・・・なるほど。適任者を手配いたそう」
「最後に、爆破するなら待機は10人前後ってところだな」
「・・・ちと多くはござらんか」
犠牲者と言うには。一応は戦力だ。
「少なすぎんと、不審に思うだろうが。十人くれえが丁度良い」
平然と、10人の命のやり取りを口にする。この時点で、その10人の命は売られた。
「・・・承知した。その10人も武市殿とともに選出するでござるよ」
「頼んだぜ、万斎」
“頼んだぜ”
その短い言葉で、簡単に喜ぶ自分がいる。
その言葉を、もらえる人間が本当に少ないことを知っているからだ。
いや、あえて彼がそうしているのかもしれないが。
この男は、こうやって、人の心を簡単に掴んでしまう。そして、捕まれたら最後、惹かれて、やまない。
一応の話が終わり、帰ろうとした時、思い出したことがあった。
「・・・そういえば、白夜叉に風呂場で会い申した」
「は?」
「奥方と一緒に」
「・・・・」
「おおかた、新婚旅行でござろうか」
「へえ・・・」
「用心のため、脱衣所で確認したところ、部屋番号は202でござる。こちらの部屋のことはひとつも言っていないでござるよ」
「・・・」
「先程、・・・途中で中断してしまったのは拙者が悪いかもしれぬが、ゆめゆめ面倒はごめんでござる。今日は、めでたい誕生日故」
「ああ?なんの心配をしてるんだ。奴らのことなんか関係ねえ。女の代わりもいらねえよ」
では、と、部屋を出ようとした時、珍しく呼び止められた。
「万斎、ちっと散歩にでもいかねえか。暇で仕方ねえ」
「・・・いいでござるよ。お供致そう」
一階の、売店近くを通って、廊下を進む。中庭に、ベンチがおいてある。
そこに行こうと思っていた。
ところが、そこには先客が居た。
何か、見覚えがあるような・・・
見れば、髪の長い女と、体格のいい男。カップルか?と思った時、意外にも、つかつかと高杉がその二人に近寄るので驚いた。
どうも、女の方は眠っているらしく、不自然に男に身体を預けている。
「兄ちゃん、何してんだい」
高杉が声を掛けると、男の方はビクッとなる。
万斎も聞きたくない、敵意むき出しのときの声だ。
「だ、誰だ、あんた・・・」
高杉のただならぬ雰囲気と、その威圧に、怯える男。
「てめぇごときが触れていい奴じゃねえよ、そいつは」
言うが速いか、女を抱いていた腕を掴んで、男の顎を強打し、すっ飛ばした。
あちゃ??!
男は、その場で動かなくなった。脳しんとうを起こしたに違いない。
「晋助・・・」
高杉は構わず、その女の頬を優しく叩く。
「う??ん・・・」とは言うが、意識はもうろうとしているようだ。
月明かりに、はっきりと、その顔が見えた・・・
桂。
誰も読まねーオナニー文はチラシの裏にでも書いてろ