だが、どっちにしても。
そのとき、高杉は出てこなかった。
慣れた自分の気配に気づかないはずはない。
そして、気づけば出てこないはずがないのだ。
常の、彼であれば。
それが拙者をとても不安にさせた。
この男を惑わせるものがこの世にあること。それは、とても危険な存在を意味する。
燃えさかる火で全てを焼き尽くそうとしている自分達にとって、消火栓になりかねない。
下手をすれば、晋助自身が死へ追い込まれかねないのではなかろうか。
しばらくして、ドアが開いた。
あわてて女が出て行く。一瞬、目があった。ぼろぼろと泣いている。
おやおや。ずいぶんと若い・・・