【空知英秋】銀魂 二百十四訓

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>>371
【桂】

風呂から上がって、のそのそと着物を着た。

のぼせた・・・いやいや、しかし、まさか万斎が着ているとは。というか、

奴がいるのか・・・



部屋に戻ろうとした時、売店の前を通りかかったが、この旅館では24時間どうも運営しているらしく、煌々と明るい。

普段世話になっているお登勢や、万屋のみんな、お妙殿などに土産を交おうかと思って立ち寄った。なにより、飲物も買いたかった。

まんじゅうやお菓子、いろんなものをかって、さて会計・・と思った時、ふと目に入ったモノがある。

煙管・・・



そう言えば、万斎が言っていた。“突然一千両用意しろと”“おたふく風邪にかかって”・・・松之助が入院していた時、誰が来てくれたのか枕元にそっとおもちゃがおいてあって。

でも、誰がおいたかは分からない。だが、もしかしたら、奴が来てくれたのでは・・・と思ったが、電話でも「しらねえ」としかいわなかった。

あいつ、端午の節句には、鯉のぼりも送ってくれたな・・・今日は誕生日か・・・

だが、あのいつぞやの電話の時の女の声を思い出して、・・・ふん、少しくらいもてなくなればいい。

あえて、あいつ好みの感じでなさそうな、煙管を一本手にとって、

そのまま会計に向かった。

さて、このまま戻ったら、

銀時に煙管を見つかったら、

何を言われるか・・・



そもそも部屋番号をしらない。フロントに預けて、渡してもらおう。

そう思って、フロントに行こうとしたが、

どんどん血の気が引いていくのが分かる。

足取りも重たく、くらくらする。

湯あたりが、長引いているのか、それとも・・・



フロントに行く、廊下の途中、倒れるように、近くの備え付けのイスに座る。

「大丈夫ですか?」

と、男の声が聞こえた。
383名無しさんの次レスにご期待下さい:2012/12/03(月) 23:25:51.61 ID:IjJT1lc+0
余談 慰安旅行2



【高杉】

偶然会った、女三人組のうちの一人を部屋に誘うと、

簡単に付いてきた。



しばらく三味線を弾きながら話をしていたが、面倒になって、そっと布団になだれ込む。

「奇麗な肌だなァ」「いい女だ」などとほめればさも当然とばかりに自慢げな態度を取る。

前戯にもはずかしげもなくでけえ声を上げやがる。

安い女。



きっと、出会ってすぐの男とこうなるのも初めてじゃねえだろう。

慣れた身体だ。入れたらすぐにいっちまいそうだなあ。

と、思っていたら、突然びくっと身体ががしなり、痙攣する。

おいおい。

入れる前にいっちまったぜ。すげえな、この女。

それでも、頃合いを見計らって入ってみれば・・・ああ、身体(こっち)だけは絶品だ。俺の目は狂ってねえ。

しかし、こいつの声だけは我慢ならねえ。うるさい口を唇でふさげば、何を勘違いしたかしがみついてきて背中に爪を立てやがる。

おいおい。てめえが傷つけて良い体じゃねえよ。

やんわり腕を外して、体を起こす。そのまま突けばあっけなくでけえ声を上げてまた痙攣する。随分簡単な身体だなあ。



あいつはこうじゃなかった。

いつもかたくなに耐えていて。それがたまらなく自分の情熱に火を付けた。



そういえば。女を抱くのは久しぶりな気がする。

何時ぶりかも、相手の顔も思い出せねえ。

覚えているのは、あいつのことだけ。・・・・・

思い出せば、身体に熱が灯る。ああ、どうにもやるせない、この、熱。

あいつの身体に触れたい・・・そして・・・
384名無しさんの次レスにご期待下さい:2012/12/03(月) 23:26:47.58 ID:LEjiwdpH0
・・・

「・・・・」

奴の気配がする。

わざとらしく立ち去らずにいる。

動きを止めた俺を不思議そうに見上げる女。



「ここで終わりとさせてくれ」

言えば、不思議そうに

「・・・え?」

俺を見る。

「いいだろ、あんたは十分楽しんだはずだぜ」

体を離せば、プライドが傷ついたのか。

「なんで・・・何言って・・・」

泣きそうな顔をした。めんどくせえな。

「耳が痛くてかなわねえ。もう勘弁してくれや」

女の服をそっちに放る。もう泣いている。



「わりいが、これから用事があるんだ。ちっと席を外してくれねえか」

「何よ!!!馬鹿にして!!!」

今度は怒ったのか。忙しい女だ。

ばっ、と、服を着て飛び出していった。



ドアの外に、奴がいる。

「突っ立ってないで、入れや」
385名無しさんの次レスにご期待下さい:2012/12/03(月) 23:27:44.93 ID:JAHDihgG0
【万斎】

その部屋の前に行くと、

女の声が、ひっきりなしに部屋から漏れ聞こえている。

結構厚い扉だと思うが、それを越して声が聞こえるとは。

・ ・・なんとも、品のない女でござる。



元来、性的に淡泊な高杉が、このようなことをするのは、久しぶりだ。

万斎がずっと部屋の入り口にいたのが分かったのか、女の声がやんだ。

高杉は、自分の情事を特に気にしない。中断されようと、見られようとも平然としている。女だけではない。

部下の命も、自分の命にすらきっと執着はしていまい。何を犠牲にしても、構わないのだ。そもそも、滅多なことでは動じない男だ、この男は。

なにより自分の野望を優先させる。

その為に重要だと思うものを優先させる、それだけのこと。

だからこそ、女より自分を優先させるのは当然だ。

きっと高杉は出てくるだろう。

そうでなくてはならない。

そのはずだ。

それなのに。

桂が騎兵隊の船にいた時、高杉の私室に泊まっていることを確かめるため、同じようにこうやってドアの近くに居たことが何度かある。

艶っぽい声はしなかった。なにやら話す声がかすかに聞こえるだけ。昔話でもしているのか、それとも・・・と思っていた。
386名無しさんの次レスにご期待下さい:2012/12/03(月) 23:28:27.39 ID:2ZgW3yyo0
だが、どっちにしても。

そのとき、高杉は出てこなかった。

慣れた自分の気配に気づかないはずはない。

そして、気づけば出てこないはずがないのだ。

常の、彼であれば。

それが拙者をとても不安にさせた。

この男を惑わせるものがこの世にあること。それは、とても危険な存在を意味する。

燃えさかる火で全てを焼き尽くそうとしている自分達にとって、消火栓になりかねない。

下手をすれば、晋助自身が死へ追い込まれかねないのではなかろうか。



しばらくして、ドアが開いた。

あわてて女が出て行く。一瞬、目があった。ぼろぼろと泣いている。

おやおや。ずいぶんと若い・・・