「ま、それで、金はあるのだが、何とも一度に一千両引き出すのは、銀行がうるさくて・・・」
「そ??なの。そんな経験ないからわからね??わ」
「とにかく、こういう事は、こまるでござるよ」
「そりゃ大変だね??」
っていうか、俺に言われてもこまるでござる。なんなの、愚痴?まあ、分かるけどね。あれがトップじゃあ・・・
いつの間にか、三味線の音色がやんでいた。
ここから、広い離れがちらりと見える。電気がついているところがいくつかあった。あそこら辺がもしかして、露天風呂付き個室か?良いところにあんなぁ、オイ。
「愚痴を聞いてもらって・・・すまなかったでござるな」
ふう、と、一呼吸。
「いや、・・・こちらこそ、すまない」ぼそっと、月子が言った。
「なに?何が?」
それっきり、桂は何も言わなかったが、万斎がなにやらにやりと笑った。
「まあ、親ばかなのはお互い様でござる」