>>362 ついっと、奥の方にいってくれる。
ヅラにはそこにいてもらい、俺だけちょっと万斎に近づく。
「なあ、さっきの話だけど、あいついんの」
「ああ、晋助でござるか・・・露天風呂付き個室をとったから、大浴場には来ないはず。なにより、先程どこぞの娘を捕まえていたから、今頃部屋に二人でいるのではないかと。
会うことはないでござろうし、心配いりもうさん」
ふ??ん。良いご身分ですこと!
「鬼兵隊って何、暇なの?んで、あんたはボディガードって訳??」
「まあ、今回はプライベートでござるな。今日は・・・」
「「あ」」
分かった。夫婦揃って思い当たる。
「晋助の誕生日でござるから」
「嫌な日だね??!アルマゲドンが生まれた日だよ」
月子が、ちょっと近づいてきている。おいおいおい。
その様子を察してか、万斎がやや大きい声で言った。
「最近の晋助は大変だったでござるよ。仕事でも大変だったが・・・どこでもらったのか、おたふく風邪にかかってしまってな。
だから慰安を兼ねて、この旅行を計画したのでござる」
へ、へえ??????。
「はやってるんだなあ・・・」
嫌な予感がする。月子を見るが、目を合わせない。まさか。
「大丈夫だったのだろうか、奴は・・・」月子が後ろから、万斎に聞く。どうでもいいだろ、そんなこと!!
「まあ、今、どこぞの娘とひとつになるくらいには、回復しているでござるよ」
「!!!!」
何?何かいま、すごい眉間に皺よってるよ!!ヅラ、てめ??・・・
「種が無事かどうかは知りもうさんが」
「は??何それ」
「ご存じないのか?おたふく風邪は成人男性にとっては生殖機能に関わる病気でござる」
「げ!!!俺、良く無事だったな!!あぶね??????っっ!!!!」
「いや、俺とお前は既に子供の頃かかっている」
「え、そうだっけ??」
「じゃあ、高杉だけ、かかってなかったのかあ・・・はっ、種なし?!ウハハハハ!!最高!!天罰だ、天罰!!神様はみてるんだよ、ちゃんと!ざまあみろ!!」
「銀時、まだ決まったわけでは・・・それに、人の不幸をわらってはいかん」
「い??や、これは嗤うところでしょ!祝うところでしょ!世のため人のため、あんな危険な種、ばらまかれてたまるか!!」
「それにしても、お二人もおたふく風邪にかかるようなところに行ったでござるか」
「うちの子が、かかって入院してたんだ・・・けど、・・・って、ヅラ・・じゃねえ、月子・・・てめえ・・・まさか」じろっとヅラを睨むと、ひどくあわてる。
「会ってなどおらんぞ!!!断じて、俺は会っていない!!」
「ははは、まあ、流行病故、何処でどう感染するかは分からないでござるよ」
万斎が笑った。てめえ、カマかけやがったな!!本当に嫌な野郎だぜ!!
「まあそれで、困ったのは、その時突然「一千両ほど用意しろ」と晋助が言いだして」
「い・・・一千両???!!!ジェット機買える!!」
桂も目をまん丸にして驚いている。びっくりするよな!!!
「いや、それは大げさであろうが、大金でござる」
「なんに使うわけ???!!」
「まあ、プライベートと言うこと以外、教えてくれなんだが、正直、こまるでござるよ」
ちらっと、月子を見たのは気のせいか。なんか、念押しされているような気分だ。
「そうだよな??、そんな金、あるわけ無いモンね」
「いや、金はあるのだが」
「あるのっっ???!!あんたら一体どんな汚い手を!!」
「いやいや、拙者こうみえても敏腕プロデューサー故、ちゃんと売り上げで稼いでいる、れっきとした労働の対価でござる」
「そんなの、全部高杉にやるなんて、どうかしてんじゃないの?」
「まあ、晋助の爪弾くメロディから、拝借しているものも結構あるので・・・そこはそれ、もちつもたれつということで。」
「へえ??????、もうあいつ、いっそのこと音楽活動しちゃえばいいのに!!攘夷止めてバンドやればいいのよぉ!!(お母さん風)」
「ま、それで、金はあるのだが、何とも一度に一千両引き出すのは、銀行がうるさくて・・・」
「そ??なの。そんな経験ないからわからね??わ」
「とにかく、こういう事は、こまるでござるよ」
「そりゃ大変だね??」
っていうか、俺に言われてもこまるでござる。なんなの、愚痴?まあ、分かるけどね。あれがトップじゃあ・・・
いつの間にか、三味線の音色がやんでいた。
ここから、広い離れがちらりと見える。電気がついているところがいくつかあった。あそこら辺がもしかして、露天風呂付き個室か?良いところにあんなぁ、オイ。
「愚痴を聞いてもらって・・・すまなかったでござるな」
ふう、と、一呼吸。
「いや、・・・こちらこそ、すまない」ぼそっと、月子が言った。
「なに?何が?」
それっきり、桂は何も言わなかったが、万斎がなにやらにやりと笑った。
「まあ、親ばかなのはお互い様でござる」
それで、万斎はあがって、体を洗い出した。
いや、こっちも上がりたいんだけどね。というか、月子を上げたいんですけどオオオ!!
ああ、真っ赤な顔して・・・
「俺、もう、限界かも・・・」
ぐったりしている。
「月子オオオオ!!」
「・・・にぎやかでござるな。目をつぶっているから、その隙にあがるといい」
「本当だろうな!!!!」
「・・・拙者、主らと兄弟になる気はござらん」
「!!!!!」
何こいつ!!!マジで、人を食ったような言い方ばっかりしやがって!!!ありえねええええええ!!むかつく!!
そっと、月子を脱衣所に追いやる。もうしょうがない。洗うのは部屋のシャワーでお願い!!
ふう・・・
「美しい御仁でござるな。・・・刀傷が惜しいが」
ぼそっと、万斎が言ってきた。
「てめえ、しっかり見てるじゃね????かああ!!」
「背中だけしか見てないでござるよ」
シャカシャカ髪を洗いながら続ける。
「ったく、油断も隙もねえ」
「まあ、お二人が夢中になる気持ちは分からぬでもない。だが・・・」
「うるせえよ」
「正直、余り晋助には関わって欲しくないでござる」
「こっちだってお断りだ!」
「プライベートに振り回されると、隊員の志気にかかわるゆえ」
「あんたんとこの事情なんてしらね??よ!こっちだって、関わりたくないっツーの!」
「いやいや、晋助にわざわざ電話してきて、性の相談窓口みたいな真似をされたら・・」
「はあアアアアアア???!!!」
「なんでも月子殿を喘がすのどうのと・・・」
「ええええええ??!!な、何それ、な、なんで知ってンのオオオ???!!」
「拙者も部屋にいたでござるよ。丁度そのとき。」
「うは・・・・・!!!!」
「まあ、その・・・気持ちは分かるでござるが・・・何分」
プッと奴がわらった。
「てんめええええ??????!!!!笑うなアアア!!あれはいっとくけど誤解だかんね!!俺、相当なテクニシャンだから!!!」
「はあ。そうでござるか」
ああ、こいつ、聞いてねえ。
「では、お先に」
と言って、さっさと脱衣所に向かう。
ぐは??????・・・くそ????・・・なんだってんだ。
カアアーーーーと、俺は恥ずかしさの余り、紅くなった。