さて、この夜。
いつくるか、いつくるか、と、気を張っていたからか。
ドアの気配に敏感になっている気がする。
大体、女達も、分かっていて晋助の相手をしていると思うが、どうも、晋助は不思議な男で、そう言った女達をも、嫉妬に狂わせるものを持っているらしい。
こればっかりは、自業自得でござるよ。
危ない女を乗せるなと言われても、晋助自身が女を危ない女にさせてしまっているのではあるまいか。男も女も虜にするカリスマ性。
それがまた、あの男の良いところでもあり、難儀なところでもあるわけで・・・
そのうち、こないと踏んで
奇麗な娘さんをかわいがっていたら、何者かの気配がする。
晋助ではない・・・ようだが。
晋助でないから、無視して良いだろうか。
しかし、気配はじっと、動かない。
まさか・・・。
まだ、事に及んでいたわけでないので、娘さんにしばし部屋で待ってもらうと、
部屋の扉を開けた。
「あ・・・武市殿?」
「どうも。こんばんは」
「どうしたでござるか?」
「本当に出てきて、おどろいていますよ。いえ、なに。晋助殿に頼まれまして。」
「晋助に?」
「ええ、この時間にここでちょっと立っていろと。そうすると、多分万斎殿が出てこられるからと」
「・・・」
「そして、出てきたら、こう言えと“俺は約束通り、用事がないから部屋にいる”と。はて、なんのことでございましょう」
やられた・・・
「・・・・申し訳ないが、武市殿・・・」