部屋を出ると、案の定奴が居る。
「おや、珍しく、息が粗いでござるな」しれっと、言う。
「なんだ」
「月子殿から、お電話でござる」
「ああ」
思い出したように掛かってくる電話。
ふう。息を整える。それを見て、さも楽しそうに。
「部屋の中でかけないでござるか」
じろりと、万斎を見る。てめえ、黙ってろ。分かってるくせによく言うぜ。
俺が電話する間、大抵こいつもいる。別に気にしたこともないが。
「なんだ、どうした」
出れば、
「あ、あの・・元気か?こちらは変わりないのだが」
「おう」
久しぶりの、奴の声。
「そう言えば、松之助の誕生日、お前、知らぬのではないかと思って・・・」
「ああ。そうだな」そういえば。
「五月五日だ。・・・端午の節句」
「こりゃずいぶんと・・・出来た日だな。めでてぇもんだ・・・」
などと、話し込んでいると。
(ヅラは大抵、話しが長い。話し始めると止まらない。まるで本物の女のようだ)
ん・・・
本物の女と言えば・・