>>338 余談 5 端午の節句
(松之助 生後11ヶ月頃)
【高杉】
最近の万斎は・・・嫌がらせなのか、タイミングが悪い。
この間もそうだったが、今日もまた。
今日は、割といい女だった。肌が白くて吸い付くようだ。
おまけに、腰の動きが尋常じゃねえ。
かすれた声を上げながら、女の腰がくねるたびに、限界に近くなる。
「う・・・っ」
めずらしく、声がでる。
熱い吐息が女に掛かる。
何とも言えない快感に襲われる。
ああ、・・・
・・・・ん?
・・・!もうちっと・・・なのに・・・なァ。
ちっ。
はあ。
身体を離す。珍しく、名残惜しい。
「すまねえ、ちょっと待っててもらえるか。それとも、帰るか?」
聞けば、女は怪訝な顔。
だが、「もちろん、待つわ」と言った。「でもすぐ戻ってね」と付け加える。
「じゃ、ちょっと待っててくれ」と女を待たせる。
部屋を出ると、案の定奴が居る。
「おや、珍しく、息が粗いでござるな」しれっと、言う。
「なんだ」
「月子殿から、お電話でござる」
「ああ」
思い出したように掛かってくる電話。
ふう。息を整える。それを見て、さも楽しそうに。
「部屋の中でかけないでござるか」
じろりと、万斎を見る。てめえ、黙ってろ。分かってるくせによく言うぜ。
俺が電話する間、大抵こいつもいる。別に気にしたこともないが。
「なんだ、どうした」
出れば、
「あ、あの・・元気か?こちらは変わりないのだが」
「おう」
久しぶりの、奴の声。
「そう言えば、松之助の誕生日、お前、知らぬのではないかと思って・・・」
「ああ。そうだな」そういえば。
「五月五日だ。・・・端午の節句」
「こりゃずいぶんと・・・出来た日だな。めでてぇもんだ・・・」
などと、話し込んでいると。
(ヅラは大抵、話しが長い。話し始めると止まらない。まるで本物の女のようだ)
ん・・・
本物の女と言えば・・
【万斉】
晋助は、必ずこの気配に反応する。
まるで、獣のように。
拙者が扉の前に立つと必ず出てくる。
それは、一人の時も、そうじゃない時も全く同じだ。
例え、女と繋がっていようと、中断してでも出てくるのが常。
そして、出てきても、乱れもなく、割と平然としている。
だが、今日は珍しく、息が上がっていた。
ああ、丁度良いところだったでござろうか・・・。
拙者の所為ではないとしても、同じ男として若干同情した。
まあ、晋助にとってはそんなに重要ではないはずだろうが。
桂の電話を取り次がなかった方が、何を言われるか分からない。
電話を横でなんとなしに聞いていると、だいぶ晋助がつまらなそうになってきた。
おおかた、エリザベスとやらの話にでも脱線したのか。
そのうち、
キイ・・・
女が、部屋から出てきた。なかなか戻らぬ晋助を心配したのでござろう。
「晋助さん、まだ・・・?」
半裸の女性。
妙に艶っぽい女でござるな。
これは美女だ。しかも、グラマー。
晋助が、顎で部屋にもどれと、女に部屋を示す。
「一体誰なの?相手は・・・」
晋助が拙者に視線を送る。
“適当に答えとけ”と言うことでござろう。その為に拙者はいるようなもの。
「まあ、大切な方でござる」
「・・・女ですか?」
「まあ、一応」
「・・・!!」女が、かっとなった。あれ?なぜ。
「晋助さん、ちょっと!!」
突然、女が晋助につかみかかる。
「あァ?」
ひらりと晋助がそれをかわしたが、それに更に怒ったように女が叫んだ。
「私以外に大切な人って、一体どういうつもり?!」
「ちょっ、ちょっと待つでござる!」慌てて、取り押さえるが、すごい力で抵抗する。
「私を部屋で待たせておいて、浮気は許さない!」
狂ったように、叫んで、電話を取ろうとする。
晋助が携帯を上に上げると、
「てめ・・・」
止めるまもなく、晋助が女の腹を蹴った。
がくり、と、気絶する女。
「万斎・・・」
「まさか狂乱女とは、思わなかったでござるよ」
「・・・捨てとけ」
「次に地上に着いた時にそういたす」
晋助は、女を一瞥すると、携帯を耳に当てた。
【高杉】
「おい」
「・・・・高杉・・・お楽しみのところ、悪かったな。・・・部屋に戻って続きでもしろ」
プッ・・ツーツー
「・・・・」
プッ。俺も、そのまま通話終了を押した。
万斉に携帯を渡せば、おそるおそる俺に聞いてきた。
「?もう話ししなくて、良かったでござるか?」
「・・・切れたから、もういい」
「かけ直さなくていいでござるか」
「・・・いい」
バタン、部屋の中に入る。
【万斉】
あの晋助の、様子。
桂・・・女の話を聞いていたでござるな・・・それで・・・
しかし、焼き餅とは、可愛いところがある。
というか、そう言う気持ちがあると言うことか。これは驚き。
倒れた女を、適当に空いている部屋に運ぼうと思ったら。
バタン、と、また晋助が出てきた。
「万斎、適当に鯉幟買っておくってくんねぇか。あいつに」
「いいでござるが、適当に?」
「・・・立派な奴」
「・・・承知したでござる」
くくく・・・あの顔。まるで、浮気を見つかった亭主のような顔でござる。
最近の晋助は、何だか可愛い。
【高杉】
今日はまた、久しぶりに女を抱いた。
別にいなけりゃいないで構わないが、
こうして女の中を味わうと、
やっぱり、これはこれで良いとおもう。
生きている、感じがする。
女が、ひときわ甲高い声を上げた。
その痙攣の中の心地よさを味わっていると・・・
・・・
ああ、また。
どうして最近てめえは。
仕方なしに部屋の外に出ると、又ヅラから電話だという。
タイミングとは恐ろしいもの。
俺が女を部屋に入れたのは、先回のヅラの電話の件以来だ。
「・・・どうした」
なんとなく、きまずく電話に出ると、反して、嬉しそうな桂の声。
ちょっと拍子抜けだ。ほっとした半面、俺のことはどうでも良いのかと、思う。
「高杉!ありがとう!」
「あ?」
「立派な鯉幟、・・・感動した」
「あ、ああ」
「高かっただろうに。すまない・・」
「別に、構わねえよ・・・元気か、あいつは」
「ああ、相変わらず元気だ!」
「そうかい」
「そう言えば、この間、検診の時に・・・」
などと、またしても、体重やら身長やら、
よく分からない成長記録を読み上げられる。
桂との話しは嫌いではないが、面白いものでもない時がある。
良く脱線しやがるし・・・
ちら、と、時計を見る。部屋の女・・・
また飛び出してきたりしないだろうな。今回の女は大丈夫だと思うが。
「高杉、聞いているのか?」
ちょっと、上の空だったのがばれたか、
「生返事ばかりして。そんなに俺の話は退屈か」
なんだ、いきなり。
「そんなことはねぇ。ちゃんと聞いている」
「じゃあ、ここで問題だ」
「はあ?」
「今の、松之助の体重はいくつだ?」
「・・・・」
「どうした、答えられんのか。俺はさっき言ったぞ!やはり聞いていなかったな!」
とたん、機嫌が悪くなる桂。
しかも、そのとき、運悪く、バタン!戸が開いた。
女が、不思議そうに、こっちを見ている。
「!!」この間の女の狂乱を思い出す。
万斎に、視線を送る。ため息混じりに、奴が女に向かう。
「高杉?」
ああ、なんだったっけ。
「・・・30kgだったかなぁ」
「・・・!!!!もういい!!貴様はどうせ、女のことにしか興味がないのだろう!この間だって、女と・・・そう言うことしか頭にないのだな・・・
父親なのに、松之助の話も聞かないで・・・大体、この電話もうっとおしいとでも思っているのだろう!」
「ま・・・まてまて」
「もう、・・・良い父親だと思った俺が馬鹿だった・・・」
「待てといってるだろーが」
万斎が、なにやら話しているが、女がこっちを見ている。
ちっ。しっかり抑えとけよ。
「晋助!!その電話切らないと、続きしてあげないからア!!」
でかい声で女が叫んだ。
ブチッ・・・
気付いたら、その女の顔面に、拳を入れるところだった。間一髪、万斎が止めて、その風圧で、女は気絶した。
「高杉・・・今日もか・・・お前、・・・・最低だな・・・・」
プッ・・・・ツーツーツー
「・・・・」
プッ
「・・・・」
万斎も、無言だ。
「万斎」
「女は捨てておくでござるよ」
「・・・もう、この船に危ない女乗せんな」
「・・・判断が難しいところでござるな・・・」
【万斉】
この日の、夕飯の時。
武市に、晋助が、
「一歳の子供ってなぁ、体重はいくつくらいなんだろうか」
と聞いていた。
「確か、うちの甥が小さい頃は・・・8Kgか、9Kg位でしたでしょうかねえ」
「・・・そうか」
「あ、もしかして、さっきの30kgって」思わず、気になっていたことを口に出した。
ジロ、と晋助に睨まれる。
「・・・・」
桂にクイズでも出されたのであろうか。答えにも答えられず、しかも、あの女。
なんとタイミングの悪い・・・
そっと、私室に戻る晋助を呼び止める。
「晋助」
「なんだ?俺はもう寝る」
「・・・実は、一人奇麗な娘さんがいるでござるが」
「だからなんだ」
「今日はもう月子殿からさすがに電話は掛からないでござるよ」
晋助は、ちょっと考えるそぶりを見せた。
「・・・・いらねえ」
「しかし、先回も、今回もでは、さすがに・・・」
「いらねえっつってんだろ。・・・一人で出した方が気楽でいい」
そう言って、さっさと部屋に帰ろうとする。
「なるほど。では、拙者が頂いていくでござる。」というと、
ぴくっと、立ち止まって、晋助が反応を返す。
「・・・・てめえ」
「何でござろう」
「・・・・俺が部屋に立ったら、出てこいよ」
「!!」
「・・・・心配すんな。ちゃんと、用事のある時だけ立つからよォ」
ククク、と怪しく笑う。
ああ、これは一本取られたでござるな。
晋助の“用事”なんて、拙者らにとっては何でも“用事”であろう。
“腹減った“だの、“眠れねえ“でも。
「・・・・拙者とて、邪魔したくてしたわけではござらぬが」
「分かってる。だから、心配すんなっていったろうが。」
と言って、くるりと背を向けて去っていった。嫌な予感がする。
さて、この夜。
いつくるか、いつくるか、と、気を張っていたからか。
ドアの気配に敏感になっている気がする。
大体、女達も、分かっていて晋助の相手をしていると思うが、どうも、晋助は不思議な男で、そう言った女達をも、嫉妬に狂わせるものを持っているらしい。
こればっかりは、自業自得でござるよ。
危ない女を乗せるなと言われても、晋助自身が女を危ない女にさせてしまっているのではあるまいか。男も女も虜にするカリスマ性。
それがまた、あの男の良いところでもあり、難儀なところでもあるわけで・・・
そのうち、こないと踏んで
奇麗な娘さんをかわいがっていたら、何者かの気配がする。
晋助ではない・・・ようだが。
晋助でないから、無視して良いだろうか。
しかし、気配はじっと、動かない。
まさか・・・。
まだ、事に及んでいたわけでないので、娘さんにしばし部屋で待ってもらうと、
部屋の扉を開けた。
「あ・・・武市殿?」
「どうも。こんばんは」
「どうしたでござるか?」
「本当に出てきて、おどろいていますよ。いえ、なに。晋助殿に頼まれまして。」
「晋助に?」
「ええ、この時間にここでちょっと立っていろと。そうすると、多分万斎殿が出てこられるからと」
「・・・」
「そして、出てきたら、こう言えと“俺は約束通り、用事がないから部屋にいる”と。はて、なんのことでございましょう」
やられた・・・
「・・・・申し訳ないが、武市殿・・・」
【高杉】
ククク・・・今頃万斎はどうしているだろう。
気付かぬふりをして楽しんでいるか。
それとも。・・・
「・・・!」
そうきたか。
・ ・・まあ、なんて返すか聞くのも一興。
バタン、と、戸を開けると案の定、武市。
「で、なんて言われたんだ?」
「!おやまあ。これは一体どういう遊びでございましょうかねえ。・・・万斎殿が、ここに立っていると、きっと晋助殿は“なんて言った?”
と言って出てくると言われましたが、ここまでその通りだと驚きですよ」
「ほう、それで」
「“今日はこれから寝ますので、晋助以外はお断り”と。一体どういう事なんです?」
「そういうことだろ。済まなかったな、変なことに狩りだして。なに、ちょっとした遊びだよ・・・もう休んで良いぜ。俺も寝る」
「どんな遊びか気きになりますが、夜も遅いことですしね。お休みなさい」
武市が一礼して去っていく。
なるほど、今日はこれから寝る・・・ねえ。
女とはまだやってなかったか。
これからお楽しみって訳だ。
ちっ、
できることなら
最中に呼び出したかったぜ。・・・
ま、また今度だな。
今日はもう、寝よう・・・
余談6 慰安旅行
(松之助、一歳のころ)
【銀時】
新婚旅行。
に、きました。
と言っても、貧乏なので、温泉旅行。
でも、結構良い方だと思うんだけど。宿代は高いし、名湯ですし。
露天がすばらしいらしい。
いや、本当は個室付き露天風呂もあるのだけど、
部屋数が少なくて、人気の宿と言うことで、取れませんでした。
でも、ヅラは、「旅行できればそれでいい」的なことを言ってくれるので、
感動します。(貴方となら何処へでも!!って、プロポーズの時も言ってくれたしい??)
さて、
時間によって、男女が入れ替わるこの露天、女→男に変わる時に、一緒に入ろうと思ってた。
こんな危険な時に、女の人は普通はいらないだろうし、男だって、遠慮するよな。うん。
ということで、・・・
「うわ????!!!広いじゃん!」
「まてまて、まず、女性がいないか、俺が確認してだな・・」
「あっ!とかって、自分が見たいだけじゃ・・・」
「んなわけあるかアアア??????!!!」
なんてやり取りしながら、結局見ると、誰もいない。
らっき??????!!!
二人で、温泉につかる。
「う??????ん、気持ちいい!!」
「ああ、心が洗われるかのようだ・・・」などと堪能している。
どこからか、三味線の音色まで聞こえてきて、風流だ。和むなあ。
ヅラもうっとりしてる。そんな顔見て、俺もうっとり・・・・
と、そこへ・・・
一人の男が入ってきた!!
サバッ!!!さっと、後ろにヅラを隠す。
あ・・・どっかでみたような・・・
「あ、白夜叉殿?」
「か・・・かか河上万斎???」
うわ??髪上げてないから分かんなかったよ、素顔も初めて知ったんですけど!!ってか、なんでここに・・・!!!
「貴殿も、この温泉に・・・きぐうでござるな」
てことは、例によって、あいつもいるの?
なんでこんなとこでこいつらに遭遇するんだよ!!
察したのか、
「これはプライベート故。晋助はここには来ないでござるよ」
ほっ。よかった。
「じゃ、あんた一人ってこと?」
「いや。正確には、晋助と二人で来ているのでござるが・・・」
「!!!!!」
背後で、ばしゃっと音がした。反応しすぎだろーー!!ヅラ!!
「・・・? おや、月子殿。・・・今は女子の時間ではござらんが・・・」
「み、みんなよ!!」
「・・・安心なされよ。拙者、メガネがないからよく見えないでござる」
「信用出来るかアアア!!」
「じゃ、少し離れるでござるよ」