【空知英秋】銀魂 二百十四訓

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「ずいぶんと、物騒なこと言うじゃないか」お登勢は、落ち着くために、煙管に口を付けた。ふうーーーと、煙を吐くと、幾分かすっきりする。

「月子のことを振り回すのも、あんたのその狂気が関係しているようだね」

「さあ・・・狂っているのは、俺か世界か。正義ってのは、何処にあるんだろうな」

「あんたの頭の中じゃないことだけは、たしかだろう」

キリッと、相手を見据えて言う。

「度胸ある女だな」

「だてに長生きしてないからね」

「はは、だったら、この世界には、知らないほうがいい世界もあるって、長生きしてたら知っているはずじゃねえか?綾乃サン」

!!本名で呼ばれたお登勢はさすがに目をまるくする。



「へえ。よく調べてるじゃないかい。確かに、そう言うのは得意そうだね」

と、男の隻眼がすっと細まり、低く響く声を出した。

「さあ、・・あんたに興味があったのかもしれねぇよ」

「なんて声出すんだい。相手が違うんじゃないか」

「違わねえ。綾乃サンよぉ・・・旦那を早くに亡くしてさびしいってんなら、俺が相手してやってもかまわねえぜ・・あんたのことは、・・・気に入った」

冗談とも、本気とも取れるささやきだ。・・・何とも魅惑的な響きがある。自分の心を垣間見せて、人の心を全て握ってしまう、そんな男じゃ無かろうか。

「いい、女だ、・・・・綾乃サン、あんたは」

わざと、区切って囁くように言う。

なんて顔するんだ・・・お登勢は目を細めた。

「ごめんだね。あたしの相手しようなんざ100年早いよ、若造が」

「クク・・・そうかい。残念だ」

ああ、でも。この男に、女が惹かれるのも無理はないと思う。長年女をやってきて思うが、こんなに闇を抱えて、傷を抱えて生きているこの男が、手をさしだしたら拒めない。

その手を、振り払うことなんか出来ない。きっと、掴んでしまう。

そして、掴んだが最後、放したくないと思ってしまう。そう言う気持ちにさせる男だ、この男は。



「たちの悪い男に掴まったもんだよ、あの子も。」

「はっ、わかってねえなあ。あいつの方が俺よりよっぼどたちがわりい」

月子の話題が出たことで、男がすっかり毒気を抜かれたような顔をした。