「銀時の名前まで語って。いつまでそうやってこそこそしているつもりだい。一生名乗らないつもりなのかい」
「あんたには、関係ないだろ」剣呑な空気を醸し出す。
「月子のことで、ちょっと話したいんだけどねえ。時間をくれないかい」
「はあ?」
「いいだろ、たまにはババアの話も聞いておくのも。あんたにとっても悪くはないと思うがねえ」
そうしたら、フン、と軽く笑った。だが、以外にも、
「少しだけならつき合ってやらあ・・・世話になっているようだしな」
と、病室の子供をちらりと見た。あら分かってんじゃないの。
きっとこれから言われることもこの男は分かってる。
二人は、病院の喫茶室に入った。
「あんた、仕事は何をしてんだい。どうも堅気じゃないようだねえ。・・・あんたのことを月子がよく高杉と呼んでいたが、確か、有名な攘夷志士にもそんな名前の奴が居たっけね」
「バアさんよ、もうちっと長生きしたいなら、余計なこと言わねえほうがいいぜ」
瞬間、察知した。この男、間違いなく、高杉晋助。本人だ。で、あれば、やはり危険だ。そして、この話は、これ以上はしない方が良いだろう。
しかし、お登勢もだてに歌舞伎町四天王ではない。キッと、高杉を見据えて切り出した。
「あんた、一体、月子のことどうおもってんだい」
「・・・人様に言う事じゃねえなぁ」
今度は、のんきに茶を飲みながら、はぐらかす。べえと舌を出して、「まずい茶だ」と言う。
「あんた、あの子に惚れてるんだろ。恋仲だった女に、そんなことも伝えずに子供だけ残しちゃあ、気持ちの整理が突かないんだよ」
「恋仲ねえ・・・確かにガキが出来たのは和姦だが、そんな甘い関係じゃねえよ、俺たちは。あいつは、目が覚めたら俺をぶっ殺しに来るという。それを俺は楽しみにしてる」
「はあ?一体どういう了見だい」話が見えない。
ククク・・・ただ嗤う。