【空知英秋】銀魂 二百十四訓

このエントリーをはてなブックマークに追加
330名無しさんの次レスにご期待下さい
お登勢が、面会に来た時、面会表に“坂田 銀時”と書いてあった。おかしいねえ。

今日銀時が来れないから、代わりに着替え持っていってくれって頼まれてきたのに。



病室まで来ると、松之助のベッドの脇に、一人の見慣れぬ男が座っている。いかにも、浪人、と言った風情の着物と、頭にはけがをしたのか包帯を巻いている。

一瞬、何処かの病室の男が来たのかと思ったが、どうも雰囲気がそうでもない。



じっと心配そうに子供の様子をうかがって、なにやら土産を側に置くと、月子の髪を触り出す。そのしぐさが、何とも言えず優しく、いとおしそうにみえた。

さも、大切なものを扱うかのような、その雰囲気・・・ああ、この男が、例の男かと、長年の勘で分かった。



あの、警戒心の強い月子が起きないのもその所為だ。

あの子は、こんなに無防備に他人がいて眠れる女じゃない。

親しい仲だからこその、優しい時間。



だが、長くは続かず、

その男がすっと立ち上がり、こちらに来た。

その男の顔・・・一目見たら忘れられない。

光る、隻眼。

これは危険だ。だが、ひるまない。

「ちょいと、待ちな」

気づいたら、呼び止めていた。



「あんただろ、松之助の父親は」

「誰だ、てめえ」

じろりと睨む。ああ、なんて目をするんだ。まるで獣だよ。

「スナックお登勢のお登勢だよ。あんたの電話、時々つないでいるんだ、覚えときな」

と言えば、興味なさそうに

「あぁ」

そのまま去っていってしまいそうだ。