>>324 余談4 ムンプス
(松之助生後4ヶ月くらい)
久しぶりに、携帯にあいつから電話が来た。
とはいえ、少しばかりタイミングが悪い。
「どうした?」
出てみれば、いつになく焦った様子で、
「あ・・・すまない。ちょっと困ったことになって」
「なんだい」
「松之助が・・・おたふくで入院することになった。それで、あの・・・申し訳ないのだが、少し入院費用を借りれないかと思って。必ず返すから・・・」と言う。
「返さなくてもかまわねえが・・・大丈夫なのか」
「ああ、一応大江戸中央病院に入院することになった。もういかねばならんので。・・・ぁ・・・申し訳ないが、万屋にではなく、スナックお登勢宛に金を送ってもらえると、助かる」
「分かった。あとで使いをやらあ」
おたふくってなんだ?良く病状を聞こうとしたが、後ろから声を掛けられる。
「晋助、そろそろ時間でござる」
「ああ、今行く」と言えば、聞こえたのだろう、電話の桂も、
「なんだ、また何か企んでいるのか?・・・まあいい、今はそれ何処ではないので、ああ、タクシーを待たせているので、じゃあ、すまないが、頼んだぞ」
と言って電話を切った。
「乾族がお待ちかねでござる」
「待たせとけ・・・、なあ万斎」
「なんでござろう」
「おたふくってなんの病気だ」
「は?」
「死ぬのか?」やけに深刻そうに聞いてくる高杉に、驚きを隠せない。
ああ、この人も、人の親か。万斎は思う。
「大丈夫でござろう。流行病のひとつ。子供は大抵かかるものゆえ」
と言えば、安心したように、会合へ向かう。この人、知らないと言うことは、かかったことがないのか・・・