2.将軍の申し出
ということで、真撰組に探りを入れたが全く分からない。
そうこうしているうちに日にちだけがたち、2週間過ぎた。何とも奇妙な光景だった。
「行く当てがない。党に戻るわけにもいかんし、(しばらく留守にすると言ってある)かといって泊まり歩く金もない。泊めてくれんか」
最初こそ銀時は渋っていたものの、桂は朝が早く、意外にも家事が得意だった。
朝起きたら、キッチンから良いにおいがしていて、泊めてもらう変わりに、と、食事の支度や洗濯をしてくれていた。
「そういや、こいつ、あんときも何か料理当番だったよな・・・」と、過去を懐かしく思いつつ、まるでお母さんのような桂を見ていた。
いそいそと食事の準備をする妙齢の美女。しゃべらなければ、桂じゃないと思えば、何とも様になっている。
銀時は、これで二人っきりだったら、まるで夫婦みたい・・・と甘い考えが浮かぶのを振り払い、いやいや、でもこれ電波野郎だから!と思う。
だが、不思議なことに、悪い気はしなかった。
神楽も、「楽で良いアル??ずっといて良いよ、ヅラ」と言ってごきげんに受け入れていた。
しかし、万事屋ののんきさとは裏腹に、桂は焦っていた。なにより、これ以上かかるようなら金もいる。稼がねば・・・
「銀時、何か分かったのか?」
「ん??、まだなんも」
「・・・はあ・・・」
と、下の階の大家が家賃を取りに来た。
キッチンにいる、美しい女をみて、あからさまに驚く。そう言えば伝えていなかった。
「いつのまに嫁さんもらったんだい?」と心底驚いた様子のお登勢に、
「気色悪いこと言うな」と銀時はうんざりしたような顔をした。
言えないけど、これ、ヅラだから。テロリストで、天然で、電波な男だから!
だが、何を思ったか、桂は突然お登勢に
「下のスナックのオーナーさんですよね?俺を働かせてもらえないだろうか」と頼みだした。
「おいおいおい!何言い出すの!!」と、銀時は驚いたが、すかさず、お登勢が
「あんた、甲斐性ないにも程があるよ!嫁さん働かせてどういうつもりだい!」と、煙草片手にすごい剣幕で詰め寄る。
それを、間に割ってはいるように、
「いや、俺は嫁じゃない。依頼人だ。依頼料を作るためにも、働かせてもらえると助かる」 と、桂が言った。
「ああ、そういうこと・・・そうだねえ。ちょっと人手が足りないから、お願いしようかねえ」
気の良いお登勢は快諾してくれた。
その日の夜から桂はスナックお登勢で働くこととなった。
「ヅラ??、夕飯ちゃんと作ってから働きにいくあるよ??」
神楽が、そんな心配だけをしていた。
桂がスナックお登勢で働きだして、上手く生活バランスが出来てきた。
朝方、帰ってきた桂は朝食を作り、みんなが食べた後、寝る。
今まではソファーで寝ていたのだが、銀時が起きた後なので気兼ねなく布団で眠れて存外よかった。
なぜソファーで寝起きしていたかというと、最初、「寝室に予備の布団があるのだから貸せ」と桂が言うのに対し、
銀時がどうしても嫌だと言ってきか無かったからだ。
それで、仕方なくソファーで寝ていた。まあ、戦時中のことを思えば、何処ででも寝ることなど出来るのだが、布団で寝れるに越したことはない。
この生活の方が、万事屋にやっかいになる以上、桂には合っていると思えた。
銀時は、銀時で、「お前はあくまでおまけなんだからソファーで十分」と言っておきながらも、一緒の部屋で寝るのを拒んだのには本当は大きな理由があった。
どうにも、桂と思っていても、女である。変な気分になってしまいそうだったのだ。
いや、いやそれはない!
・・・と、頭で否定できても、身体が否定できるかは別だ。これ以上ややこしいことになりたくなかったので、