1.万事屋への依頼者
万事屋に、客が来た。
扉を開けた新八は、固まってしまう。すごい美人だった。「あ、あの・・・」と見ほれて言葉が出ない。
なかなか戻ってこない新八を気にして銀時が来た。「なに???お客さん?」とだらしなくやってきた男も珍しく驚いた顔をした。
後ろから神楽がやってきて「どうしたアル?・・・すごい美人アル!」
「依頼に来たのだが、あがっても良いだろうか?」
当の本人は、なんとも凛とした声で言った。まるで武士のようなしゃべり方だ。
お茶くみは本来新八の十八番であるが、このときばかりはなぜか銀時が入れた。「ささ。ど??ぞ!粗茶ですが!」
この男が緊張しているなんて珍しい。
「何処かで見たような顔アル。女優か何かアルか?」
そのとき、すかさず言った美女の言葉に、一瞬にして空気が凍り付いた。
「女優じゃない!桂だ!」
なんとも、不思議な話もあるものだ。
天人の雌化薬とやらを盛られて、どうも雌化・・・女になってしまったらしい。
種の保存のため、絶滅危惧種に本来使われる薬だそうで、雄が増えるよりも雌が増えた方が繁殖しやすいことからそれを目的として使われている。
どうやら子供を産むとやがて元に戻ると言うが、そんなこともしていられない。
そんな馬鹿な・・・と銀時たちは思いながらも、今の桂を目の当たりにしては否定できない。
当の本人は、もう状況把握を嫌というほどしているのだろう、落ち着いていた。
「なんとかしてほしいのだ。できたら、1ヶ月以内くらいに」
「無理だろ??・・・つーかホントにヅラ?ホントに女?」ちょっと見せてよ、と言って桂の胸元に手をかけようとしたとき、
懐かしいアッパーカットが飛んできた。
「ぐはあっ!!」同時に、
「ヅラじゃない!桂だ」とすかさず返す、その話っぷりは桂そのものだ。
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名無しさんの次レスにご期待下さい:2012/11/26(月) 16:01:23.25 ID:oTmuxee10
「ったたたた・・・」
あごを押さえて、引きつったような笑いを浮かべる銀時に、新八が確信する。
「どうやらホントみたいですね、銀さん」
「う??ん、どうすっかなあ。何とかって言われてもねえ。坂本に聞いてみれば?詳しそうじゃん」
「とっくに聞いた。調べてはくれるそうだが、・・・時間がかかると言われた。あいつも忙しい身のようだからな」
「ま??ね」
「お前は・・・幕府の犬と親しいだろう。阿奴らの手を借りるのはしゃくだが仕方ない。なにかきき出してみてくれんか」
「真撰組に聞けってかあ?めんどくせ??な??!」全くやる気を見せない万事屋主人。しかし、
「金は払うぞ!」その言葉に、
「引き受けました!」万事屋の三人が、一致団結して、声をそろえて立ち上がった。