・・・一体なんだってんだ。自嘲気味に嗤う。
どうでもいいことに、今日は振り回されすぎだ。ばかばかしい。
そこまで考えたところで、当の本人が風呂から上がってきた。頭には例の簪がついている。
俺にいることに気づいて、無意識に乱れてもいない襟を正した。
思わず、おかしくなってしまい、
「そんな、おびえんなよ」と、嗤ってやった。それをきいて、即座に「怯えてなどいない」と桂が偉くむっとした様子で言い返してきた。
その反応に気分が良かったので、
「そうかい。昨日は随分ふるえていたみたいだったが」いつになく返答してしまった。
「武者震いという奴だ。貴様相手に俺が怯えるわけがなかろう」などと負け惜しみめいたことを言う。愉快だ。そこで、さらに
「そうだったな、痛くも痒くもねえんだろ」とい言えば、桂が、低い声で
「お前の考えていることは、昔からわからん。俺は貴様のそう言うところが嫌いだ」と言った。
高揚した気分はそれで消えて、一つの疑問に思考が戻る。