「必要ならば、別にかまわん」
喜ぶか、予想通りだとあの嗤いをするだろうと思っていたら、意外なことに、高杉は驚愕の表情を見せた。
演技などではない。これは、こやつが心底驚いたときの表情だ。
「?!」
「その代わり、貴様の目的を正直に話せ」これは案外、交渉としては上等ではないか。
「・・・・お前は」
そこまで言って、また高杉は口をつぐんだ。
あきれたように、だが、何か考える様子でしばらくすると
「後悔、すんなよ」と言って近づいてきた。
俺の肩を両手で掴んで、引き寄せる。髪をとめている紅い簪を、どうやらくわえて、落としたらしい。カチャンと、床に高い音が響いて、長い髪が散らばった。
気障なことをする・・・と思った瞬間、
「もう少ししたら、教えてやる」
耳元で、高杉が低くささやいた。その吐息と、声音にぞっとする。今まで聞いたことのない声だ。まるで、男が女を口説くようじゃないか。
俺相手に・・・好きにするが良いと言って覚悟を決めている俺相手に・・・なぜそんな声を出すんだ。