>>158 「お前はどうなんだ」と腕をぎゅっと掴んで高杉がきいてきた。
「どうって何がだ」
「嫌だったか」
「はあ?なぜそんなことを気にするのだ?俺がどうだったかなんてお前に関係ないだろう」
高杉が腕を放した。なんだというのだ、一体。どうせ貴様の良からぬ計画とやらのただの駒なんだろうが、俺は。
そして、貴様という奴はその駒がどう思おうと、どうなろうと知ったことではないはずだ。何を今更、殊勝な面持ちでそんな事を聞いてくる?何を気にしているというんだ。
「・・・・いいはずないだろうが」貴様がよく分かっているくせに。貴様が気持ち悪いというのなら、こっちはそれ以上にはるかに状況的に気味が悪いわ!!
「・・・だろうな・・・」
「・・・・だが」ひとつ、考えが浮かんだ。
「・・・・」
お前のやることを知ることが先だ。そうでなければ、俺がここにいる意味がないのだから。その為ならば、この身体とてどうなろうと構わない。
だから、必要とあらばあえて乗ってやろうではないか、お前の作戦とやらに。
「必要ならば、別にかまわん」
喜ぶか、予想通りだとあの嗤いをするだろうと思っていたら、意外なことに、高杉は驚愕の表情を見せた。
演技などではない。これは、こやつが心底驚いたときの表情だ。
「?!」
「その代わり、貴様の目的を正直に話せ」これは案外、交渉としては上等ではないか。
「・・・・お前は」
そこまで言って、また高杉は口をつぐんだ。
あきれたように、だが、何か考える様子でしばらくすると
「後悔、すんなよ」と言って近づいてきた。
俺の肩を両手で掴んで、引き寄せる。髪をとめている紅い簪を、どうやらくわえて、落としたらしい。カチャンと、床に高い音が響いて、長い髪が散らばった。
気障なことをする・・・と思った瞬間、
「もう少ししたら、教えてやる」
耳元で、高杉が低くささやいた。その吐息と、声音にぞっとする。今まで聞いたことのない声だ。まるで、男が女を口説くようじゃないか。
俺相手に・・・好きにするが良いと言って覚悟を決めている俺相手に・・・なぜそんな声を出すんだ。
着物の袷をそっと開かれた。妙な気恥ずかしさがあって、高杉にこの行為の必要性の念押しをしなければと思う。お前の計画を知るためなんだ。ちゃんと、分かっているんだろうな。
「そうか・・・正直にはな」せよ、と言いたかった。
ところが、最後まで言えなかった。あろう事か唇を合わせてきた。
!!!!!!何をするのだ、貴様は??!!嫌がらせにも程がある。昨日そんなそぶりもなかったじゃないか。理解できない。俺相手に、貴様は一体何をしているんだ。
と、驚いていると、感触が変わった。どうやら、高杉が嗤ったらしい。
昨日の高杉とは別人ではないかと思うほどに、今日の高杉は俺にそっと触れてきた。まるで、こわれ物でも扱うかのように。
・ ・・なぜ、こんな抱き方をするのだろう。この男は。昨日のように、貴様らしく獣のように組み敷けばいいじゃないか。
自分の快楽のためだけに勝手に突き上げて、俺にはいっそ痛みだけ与えて、何も考えられなくしてくれればいいのに。
何故、そんな優しくするのだ。なぜ、そんな熱い目で俺を見るのだ。これでは、まるで・・・
勘違いしてしまいそうな、女々しい自分に哀しくなる。
昨日とは違った、感情、感触、そして、感覚。
優しくも激しい律動の中、やるせない思いだけが募る。
なんなのだ、一体・・・理解できない。