【空知英秋】銀魂 二百十四訓

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3.5名前のない感情

(桂視点)

その日の夜、風呂を借りに高杉の部屋へ行くのが、何だか億劫で仕方なかった。かといって、行かなければ入りあぐねてしまうし・・・と、

葛藤の後、高杉の私室のドアを開けた。そこには、主の姿はなくて、ほっとする。そして、机の上に置いてある紅い簪を見つけて、また安堵した。

やはり高杉が持っていたらしい。贈り主を聞いてきたのは自分のくせに、銀時にもらった、と言ったことが気に障ったのか、朝起きると何処にもなかった。

お陰で、今日は髪が結えずに結んでいた。



主が戻ってくる前に風呂に入ってしまおうと、そそくさと風呂場に向かう。

そこにある、小さな鏡には既に見慣れた女の身体と、見慣れぬ紅斑が写っている。

まさか、こんな事になるとは・・・と、ため息をつきながら、身体を洗い流した。

突然、自分に押し入ってきてかき回し、嵐のように通り過ぎた奴のことを思い出す。訳の分からない奴だ。ほんとに。

昨日、あいつのしたことの目的が測りかねる。俺の言ったことにかっとなったことが発端であろうが、だからといって殴る蹴るの暴力ならいざ知らず、

まさかこんな暴力をする奴だとは正直思っていなかった。