【ネタバレ】ベイビーステップ 予習ノート 10冊目
●36−37合併号#221『要所』@バレ:
前回――。緒方の奇襲に対し、今こそ反撃のチャンスだと強引にジャンプショットを繰り出したエーちゃん。
エ(行けっ!)「はあっ!!(`・皿・´)」――その気合いと共に放たれた球は、弾丸のごとくダウンザラインを突き抜け、見事に緒方のコートへと炸裂したのだった! 【緒1−1エ】
主審「ゲーム丸尾。カウント1−1、セカンドセット」エ「よしっ!щ(゚Д゚щ)グッ.。oO(キープ! とにかくキープ! ジャンプショットのおかげで、何とか最悪な状況は免れた……)
この会心の一撃には、キープできたことによる安堵感よりも高揚感の方が勝ってくる感じだったが、そんな中でも頭脳は努めて冷静でいることを忘れない。
エ(相手の意表を突けてるのが大きい。でも、ジャンプショット自体は不安定だから、厳しい状況は変わってない)
このように、すぐ次へと気持ちを切り替えられるメンタルの強さこそが、何よりも彼の一番の武器である。
一方の緒方はというと、オーソドックスな戦い方から一転して意表を突いた戦術で勝負に出たところを、まさかの逆襲で完璧に跳ね返されてしまったことで、かなりショックを受けていた。
緒方(決まらないから逆を突いたのに決め返された……。追い込まれて覚悟が決まったってことか。……こっちも、もっといろいろやって行かないと……)
こうして、エーちゃんの勝利に対する貪欲さを目の当たりにした緒方もまた、さらなる己の変化の必要性を痛感するのだった。
さて、続く第3ゲームは、緒方のサーブゲーム――。
エーちゃんは、ジャンプショットをきっかけに何とかブレイクへの糸口を掴もうと模索するのだが、強力なサーブから、従来のオーソドックスな展開に変化を付けて攻めてきだした緒方の前に、ほとんどジャンプショットを打つ余裕すら見いだせず大苦戦。
逆に緒方は、相手を少し引きつけつつ、予想していないコースを選択するという、この容易でない作業を難なくこなして圧倒的にゲームを支配し、まったく危なげなくキープしたのだった。【緒2−1エ】
そして、続く第4ゲームは、エーちゃんのサーブゲーム――。
エーちゃんとしては、現状では通常の攻撃が通用しない以上、不確実とはいえジャンプショットに頼るしかないという苦境が続き、そうなれば当然ミスも増えてピンチに陥るという、まさに悪循環の流れにハマっていた。
特に、頼みの綱のジャンプショットの“使いどころ”が今ひとつ掴めずにいたことで、攻撃のリズムに乗れず、余計に苦戦を強いられる状況である。
ただ、幸いだったのは、ジャンプショットの使いどころを試行錯誤していたことで、緒方からしても、どのタイミングで打ってくるのかが読めないいう効果を生んだことだ。それが緒方のリズムをも狂わせ、ミスを誘発してくれていた。
そんなこんなでデュースを繰り返すこと数回――。最後はエーちゃんの粘り強さに軍配が上がり、第2ゲームに続いてこの第4ゲームもエーちゃんがキープしたのだった。【緒2−2エ】
エ「っし!щ(゚Д゚щ)グッ).。oO(ジャンプショットの成功は、どのタイミングで打つかにかかってる。その分別をハッキリさせられれば、……いや、それができなきゃ、逆にいつブレイクされるか分からない(゚Д゚;))」
緒方(あと一息……。早めに1つブレイクしておきたい(゚ー゚;))
そんな両者それぞれの思惑と共にゲームは進んでいく――。
緒方は、持ち前の力と技術に加えて、戦略性も底上げすることでサーブゲームを圧倒し楽々とキープするのに対し、エーちゃんは、諸刃の剣であるジャンプショットの使いどころに迷い苦しみながらも、土壇場のところで踏ん張りブレイクを許さない。
こうして、スコア上はキープ合戦の様相を呈していたのだが、誰の目にも獲得したポイントが少ないエーちゃんが劣勢で緒方が優勢なのは明らかだった。それでも、互いにキープしているから同点というこの状況は、まさにテニスならではの不条理と言えるかもしれない。
そのまま、こうした微妙な拮抗状態は実に8ゲームにも及び、スコア【緒6−5エ】で迎えた第12ゲーム前の休憩時間――。
次はエーちゃんのサーブゲームだが、彼からすれば、スコア的にはここでブレイクを許せば即負けという、本当の崖っぷちに追い込まれた状況となった。
そのことは、当然ながら試合を見守るギャラリー達にも分かっており、場内は独特の緊張感に包まれ始めていく……。
モブA「どこかで緒方がブレイクするかと思ったけど、丸尾は、よく耐えてるよな」B「【6−6】のタイブレークまで持ち込んだら、逆転あるかもしんねえぞ」C「やっぱ、丸尾の試合おもしれえ!」D「がんばれ丸尾ーっ!」E「次で決めろよ緒方っ!」
こうした両者への声援や期待感を見比べてみると、意外にもエーちゃんに対する「何かやってくれそう」だという期待感の方が高まっている雰囲気があった。エーちゃんの両親は、この我が子への声援の多さに驚くのだった。
さて、そんな外野の喧噪をよそに、エーちゃんと緒方は、それぞれに“ノリきれない”ことへの分析を進めていた。
まず、エーちゃんは、自慢の分析力を駆使しても、未だにジャンプショットの使いどころが明確でないことに焦りを感じていた。
エ(ジャンプショットで何とか流れは止められてるけど、このままじゃ厳しい。どんな状況でジャンプショットを打つべきかが、いくら情報を集めてもハッキリしない……。基本はチャンスで行くべきなんだけど、そんなの待ってたらやられちゃうし。
苦境で無理して決まることもあれば、余裕があっても打つ球の深さや、相手の体勢次第で決まらないどころか、ミスったり逆襲される。思い切り行くのが大事なショットだけに、ここをクリアにしないと、劣勢は変わらない……(`・д・´;))
方や緒方は、この第2セットに入ってからは終始優勢に試合を進めながらも、あと一歩の所でブレイクを決めきれないことに、もどかしさを感じていた。
緒方(あと、ほんのちょっとなのに……。何でブレイクできないんだろう。あとちょっと……)
その「あとちょっと」というフレーズが浮かんだ刹那、その脳裏には、以前に彼女のリサと闘争心について話した記憶が思い起こされてきたのだった――。
それは、復帰後しばらくしてのこと。
当時、まだ身体や試合感が本調子でなかったこともあり、緒方は、競った試合になると勝てないことが続いていた。その日も、もう少しで勝てそうだった試合を落としてしまい、試合後にリサが励ましに来てくれたのだが……。
リサ「あとちょっとで勝てたのにねー。克巳の方が、全然強く見えたのにねー」
緒方「まあね……。でも、今日の相手は、すごく強かったよ。見た目には分かりにくかったけど(⌒ー⌒)」
リサとしては、落ち込んでいるであろう彼氏を気遣って、あえて普段と変わらない調子で声をかけてみたのだが、こちらを向いた彼氏の表情は、それこそ普段と変わらずに穏やかな様子だったことに拍子抜けしてしまった。
リサ「なーんか、せっかく復帰したのに、負けてもあんまり悔しくなさそうだね」
緒方「えっ……。そんなことないよ。悔しいよ……。でも確かに、今はテニスが出来るだけで嬉しいとは思ってるけどね」
そういって、またひときわ穏やかに微笑む彼氏の表情は魅力的だった。
リサ「そーいう克己も好きだけどさ……('ω'*)」緒方「えっ?(^▽^〃)」
しかし、この場合、肝心なのはそちらじゃないので、リサは気を取り直して正直な気持ちを打ち明けた。
リサ「でも、ちょっと心配かも」緒方「心配?」
リサ「だって、復帰してからの克己って、競った試合であんまり勝ててないでしょ。それって“闘争心”が無くなっちゃったからなんじゃないかなって思って……」緒方「!?Σ(゚ー゚;)」
リサ「私も運動神経無いなりに陸上やってたから思うんだけどさ、ギリギリの勝負で勝つのは、やっぱり「勝ちたい!」って強く思った方だもん。克己は、長いブランクを頑張って越えた達成感で、そういうの忘れちゃったのかなって……」
緒方「そ、そうなのかな?(゚д゚|||)ガーン」
緒方にとって、それは予想外の指摘だった。確かに、よくよく考えてみれば、再びテニスが出来るようになった喜びばかりが先行して、闘争心といった勝ち負けに関する意識は希薄になっていたかもしれない。……そう思うと、急に不安になってきた緒方である。
緒方「どうしよう……。どうすれば闘争心、出るかな?(;´・ω・`)」リサ「え?(・∀・;)」
リサは、自ら話題を振っておいて何だが、予想以上に食いついてきてくれた彼氏に対して、内心しめしめと思いつつ、わりとニブちんな頭にはどう言ったものかと思案の後……。
リサ「そーねー……、克己に分かりやすく言うなら……」……ほどなくして(リサ的に)浮かんだ名案は、コレだった。
リサ「トラ(虎)になればいいのよ!(・∀・)< 肉食!」緒方「と、トラ?(^ω^;)」
緒方は、この予想の斜め上の発想に思考が追いつかず、しばし呆然としてしまったが、そんな彼氏の反応をよそに、彼女はどんどん話を進めていく。
リサ「トラみたいに、獲物をよく観察して、機会をうかがって、細心の注意で一気にがぶりつくの! ガブッとね♥」
この、何ともアバウトな発想と表現力……。どうやらリサ嬢、マーシャ似なつり目のクールビューティーかと思いきや、中身は、なっちゃんと同じ“感覚派”のようだ。〜と、それはさておき。
緒方的には、未だ理解の範疇を超えていたが、せっかく彼女が考えてくれたアドバイスなので、彼なりにトラに成ることをイメージしてみた。
……結果、導き出されたのは。「が、ガオー!(ノ ゚Д゚)ノ」……何とも迫力に欠ける、下手っぴなトラの物真似だった。リサ「……ダメだこりゃ(^ω^;)」
――以上、回想終わり。
緒方(……なんか、妙にハッキリと思い出した)
あの時は、急に「トラになれ」などと言われた結果、ただのバカップルなやり取りで終わってしまったのだが、こうして今、勝負どころで競り負けている状況で思い返すと、彼女の言わんとした“真意”が理解できたのだ。
緒方(有利に展開してるのに、結局ブレイクできないのは、リサの言うとおり闘争心で勝ててないのかもしれない。復帰後、準備して迎えたこの大会が、この先のためにどれだけ重要なのかは、分かってるはずなのに……)
こうして、己の心に巣くっていた“甘さ”を実感できた緒方は、心機一転、闘争モードへと変貌していくのだった。「今こそ、トラに――!(`・ω・´)」
さあ、そして始まる、この試合最大の『要所』となる第12ゲーム――。
エ(とにかく、ここまでキープしてるんだから、ここも絶対キープ! そのためにジャンプショットは必要……。だったら、まずメンタル。不安定だから思い切って行きづらいところを、どこまで行けるか。……でも、それだけじゃまだ足りない)
エーちゃんは、サーブの準備に入りながらも、時間をめいっぱい使って、他に何か打開策はないものかと頭脳をフル回転させていく。
エ(もっと何かないか? ジャンプショットみたいに、今までやってこなかった“新しい”、自分には無い何か……。クソ……、思いつかない!><;)
ほどなくして時間切れとなり、仕方なくサーブの動作に入るが、なおもその頭脳は考えることを止めない。いや、止められない――。
エ(もう、これ以上できることはないのか? 他の選手……。難波江くんだったら、荒谷くんだったらどうする? 俺に無いものを持ってる“強い人”……)
――そこまで考えた時に、ふと思い浮かんだのは、誰よりも自分に力を与えてくれる“あの人”の姿だった!
エ(強い人……、それこそ“なっちゃん”とか……。……って、なっちゃん!?Σ(o゚д゚o;)ノ)
そのままエーちゃんは、愛しの君を思い描きながらサーブを放つ! 果たして、その結果やいかに――!?
同時刻――。
なっちゃんもまた試合中で、これからサーブを打とうかと準備しているところだったが、その彼女のコートへ他会場からの大歓声がこだまする。
な(すごい歓声……。エーちゃんのコートかな?Σ(*’o’*))
まさしくその通りだった。これは岡田戦の時と同じく、なっちゃんの元へ大歓声が届いたということで、エーちゃんの勝利フラグか!?
逆に、彼女とのイチャラブな過去を思い出した緒方にとっては、負けフラグが立ったということなのだろうか!?
それにしても、胸元で球を持つ なっちゃんのパイオツカイデーすぎるだろう対抗できるのは3年後の覚醒マーシャぐらいじゃね〜のとか、しょーもない感想を抱いたところで、次回『スクランブル』に続く。