【空知英秋】銀魂 ネタバレスレッドpart293

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280名無しさんの次レスにご期待下さい
「……無事そうで何よりだ。心配して損しちまった気がするくれーだ」
 イライラした表情で土方は銀時をにらみながら煙草をふかした。
 ほこりを払いながら銀時はチンピラ警官を見つめ返す。
「そーいやオメー、こんなところで何してんのよ。また見回り? ごくろうさんだねぇ」
 吸い終わったたばこを携帯灰皿にねじ込みながら、どこかバツが悪そうに土方が舌打ちする。
「ちげーよ。今日はオメーに会いに来たんだよ」
「俺に? 何でまた」
「テメーらんとこ行ったら電気が消えてたんでな。どっかいっちまったんだろうと思って引き返してきたとこだ。そしたら偶然白髪頭の男が街中歩いてるのを見つけてな」
「へぇ……で、何の用なの? 俺もう真選組に話せること、もーないんだけど」
 土方とはすでに、四日前に鬼兵隊についての話をしてある。銀時は万事屋に来られると困るので、わざわざ痛む傷をおして屯所近くまで出向いて話してやった。桂についても聞かれたが、
高杉に彼が捕まっていたことも一緒に戦って逃げ出したことも話していない。銀時ひとりで屋敷付近まで行ってみたところ、偶然巻き込まれたことにしてあった。
「別に、そういうわけじゃねーよ。真選組の件でてめーにゃ世話になってたからな……今日はようやく時間もできたし、酒の一杯くらい奢ろうかと思ったんだよ」
 ついでに何か聞き出すつもりだと思ったのは、銀時の色眼鏡のせいだろうか。
 いや、もしかしたら彼も何か語りたいことがあるのかもしれない。何の裏もなく。
 ツンデレと突っ込みたいところだが、どことなくくたびれた雰囲気の土方は、そういう要素とことなったある種の陰りを見せている。
 認めたくはないが、土方はやはり自分と似たところがある男だった。
 少しだけ考えてから、銀時は肩をすくめた。
「ついでに夕飯奢ってくれんならつきあってもいーぜ、多串くん」
居酒屋で二人は席をひとつあけて横に並びながら適当に料理を注文した。土方は案の定、さらにマヨネーズもチューブで出すよう注文していた。
 相変わらずの味覚崩壊ぶりですね、このマヨラは。
「その後どーなのよ。鬼兵隊の奴らはなんか動いたわけ?」
 唐突に銀時は言った。適当な話題がなかったことと、何か話していないとまた余計なことを考え出しそうだったからそう言っただけだった。
 実際、聞くまでもなく何もないことはわかっている。
「いや……いたって平穏無事。拍子抜けしたくれーだ」
 ちょうど酒とつまみを先に出されたので、二人は黙ってお猪口に熱燗を注ぎ、同時に飲みほした。日本酒の熱燗。安酒だが、気分が悪い時に飲む分には何でもよかった。
 そもそも、市中の警戒網は解かれたものの、要所要所では未だ幕府側は警戒を怠っていない。それに何かが引っかかることもなかったようである。
第一、鬼兵隊が本格的に動いてしまったらそれはそれは大きな騒ぎを起こすに決まっている。銀時たちの耳に入らないはずもないのだ。
 さらにもう一杯飲み干す土方の方をちらりと見やって、銀時は口元に笑みを浮かべた。
「ま、あれだね。まだ気は抜けねーだろーけど。とりあえず奴らは見事にとんずらかましたってことか」
「ったく……あいつら、やるこたぁ過激なくせにちっともその姿を見せやがらねぇ……攘夷志士ってのはどいつもこいつも逃げ足だけは速ぇようだな」
 やや挑発するような言葉だったが、自分には関係ないので無視した。おそらく桂のことも言いたいのだろうが。
 土方はさらに杯を干し、一本目の銚子を開けてしまうとすぐさま店主に追加を注文した。
 今日はいやに飲もうとしているようだった。
「それにしてもわからねぇ……」
 少し赤みのさしたほほの仏頂面は、照れているようにも見えてどこかおかしかった。笑いをこらえながら、人のいいお兄さんのような声音で銀時は土方に問う。
「何がわかんねーって?」
「へいおまち、熱燗一本ね」
 店主がカウンター越しに出してきた酒を受け取るなり注ぎ、いっきにお猪口を開けてから土方がつぶやくように言った。
「あの館にゃあ……何にもなかった。そりゃ武器の類はあったけどな。オメーが破壊してきたっつーやつ以外には、そういう危ねぇもんは何にもなかった」
「……」