【サンデー/若木民喜】神のみぞ知るセカイ FLAG178
> 「目を覚まして、歩美」
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> ――携帯で録音した桂馬の声を再生するちひろ。
> 『もう歩美の好感度は十分上がってる!!』 『あとは一つ、大きなイベントがあれば攻略できる!!』 『歩美の攻略が一番重要だ!!』
> 「桂木は歩美をゲームのように攻略しているのよ!!」
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> ―――廊下で京に押さえつけられている桂馬。
> 「ぬおおおお・・・」 「ちょっと!おとなしくしてよ! 二人が今着替えてんだから」 「ちひろ・・・一体何をしているんだ!? くそ!聞こえない!!」
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> ―――ちひろの言葉に困惑する歩美。
> 「え? で、でも・・・」
> 「歩美が入ってところを狙わずに、桂木が風呂を覗けると思う?」
> 「!! ど、どーしてそれを知ってんの!?」
> 「私、見てたから。桂木とはずっと一緒に居たし」
> 「川に呼び出したのも、公園に行ったのも全部計画通りなのよ!!私の目の前で、桂木は自分の計画に自信満々な様子だったわ!!
> あいつはゲームをしているだけ・・・ゲームのように今夜歩美を攻略するのよ!!」
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> ―――京を振り切り、部屋に飛び込んできた桂馬。
> 「ちひろ・・・一体何をしてるんだ!?」
> 「あんたには悪いけど、あんたの計画をぶっ壊してやったから」
> 「桂木・・・・説明してくれない?」
> 「歩美、それは・・・」
> 「桂木はいっつもあいまい。それも桂木のテクニックだよね」
> 「ウソを吐いたの?」
> 「歩美・・・」
> 「あんた、歩美に下着返した? 風呂場から盗んだあれ」
> 「ちひろ! お前と関係ないだろ!!」
> 「なによ? 全部事実でしょ。 こんな男に騙されるなんて歩美、あんたバカだよ・・・そして私も」
> ―――歩美に殴られる桂馬。
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> ―――寺田家から飛び出していく歩美。
> 「ノーラ!歩美が出てったわ! ヴィンテージに見つかる前に彼女を止めて!」
> 「待て、ハクア!!
> まだ手の内を歩美には晒さない! 気付かれないようにガードしてくれ!」
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> ―――ハクアからの連絡を受けるノーラ。
> 「解ったわハクア。やってみるけど、約束はできないわよ」
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> ―――ちひろを引き連れて部屋を出ようとする桂馬を止める京。
> 「ちょっとお、部屋を片付けていってよね!!」
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> ―――部屋の片付けをする桂馬、ちひろ、京。
> 「ちひろ・・・一体何のつもりなんだ? 状況、解っているのか?」
> 『あの三人、何なの? もしかして痴話ゲンカ?』
> 「もし歩美を攻略できなかったら、ハクアが言ったように恐ろしいことが起こるってことを解ってるのか!?」
> 「じゃあ、桂木こそ、どうして真面目にならないのよ?私・・・あんたのやり口、大っ嫌い!!歩美はまっすぐに突き進むようにしか考えられないのよ!!
> だから今、歩美は困惑しているの。歩美にウソを吐くのはは止めて!!もしあんたが歩美を攻略したいのなら、歩美と本気で恋をしなさいよ!!」
> ―――ちひろの顔を覗き込む桂馬。
> 「わかった・・・やってみる」
> 「・・・・」
> 「ちょっと、二人とも何やってんのよ?」
> 「京、ゴメン、後で説明する」
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> ―――寺田家の玄関。
> 「ハクア、行くぞ。ちひろと一緒に移動する。あと、頼みがある」
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> ―――舞島海浜公園あかね丸のマストに座る灯。
> 「桂木よ・・・遅過ぎはしないか・・・?」
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> ―――歩美の家の前。
> 「歩美はまだ帰ってないようだな・・・」
> 「ああ・・・一体何をしたのよ、ちひろ。桂木の攻略、振り出しじゃない」
> 「でもこれで、歩美のココロから私は消え去ったわ」
> 「えっ!?」
> 「歩美が私に気を遣っているように見えたし。だけど今じゃ、私と桂木の関係は完全にオシマイ。後は、桂木と歩美次第ね」
> 「それじゃ、ちひろは三角関係を解消するために全部バラしたの?」
> 「私があんた達の目的をバラさなかったから、桂木は解っていたみたいだけどね。歩美は大丈夫だよ。一度好きになったものを簡単には嫌いにはならないから。
> 桂木がウソを吐かなければ、歩美はきっと桂木を許すよ・・・」
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> 「それよりも、教えてくれない? 何で桂木は、私とデートをしたの?」
> 「えっ?」
> 「私はあんた達の正体を気にしてないけど、桂木は歩美を狙ってたじゃない?だったら何で桂木は、私とデートしたのよ? 時間の無駄なのに」
> 「う・・・それは・・・」
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> ―――帰ってきた歩美に気付くハクアとちひろ。
> 「!! 歩美が帰ってきたわ」
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> ―――家路につく歩美。
> 『長いこと、なんか変だと思ったんだよなあ・・・桂木がそんなにちゃんとした奴じゃないって知っていたのに。だけど・・・知らなかった。桂木が見た目ほど悪い奴じゃないって・・・」
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> ―――固まる歩美、ちひろ、ハクア。
> 「待ってたよ。ボクのお姫様」
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> ―――馬術服を纏い白馬に跨がった桂馬と、呆気にとられる三人。
> 『か、桂木!? あんた、バカじゃないの?正直言って、ちょっとでも良い奴だと思ったことを弁解したい・・・』
> 『なんでそこまでやるのよ? なんで事態を悪くするのよ!?』
> 「現実とは一体何か・・・? ボクは理想のセカイに住んでいる。ボクは歩美の前でニセモノの人格を見せたりしない。だからこそ、ボクは謝らない!!
> 本当のボク自身・・・それを歩美に見せたいんだ!!歩美、一緒に行こう!!」
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> ―――跳ねる馬から落ちる桂馬。
> 「うおっ! ちくしょう!!」