【サンデー/若木民喜】神のみぞ知るセカイ FLAG171
舞校祭、メイドも走るが… FLAG173「Punish Vanish」
歩美が大きな袋を両手に持って走っている。中身は追加の紙コップ。
2-Bの喫茶店は一日目からなかなかの繁盛ぶり。これなら大成功だろう。
歩美が厨房に入る。桂馬の姿がないようだが…?
桂馬「コップあったか?」
突然、桂馬が歩美の背後から呼びかけてくる。
歩美は振り向きもせず、声のした方へ袋を突き出す。
「こんな早くコップがなくなるなんて、」「どーゆー見積もりしてんだ?」
桂馬の挑発も歩美は無視。
「わぁ〜お湯が〜〜」
桂馬がわざとらしくこぼしてくるが、それも歩美は回避。二度も。
「かかっても熱くないし、大丈夫だぞ。」
歩美「なんでかからなきゃいけないのよ。」
桂馬「きっかけなんかどーでもいいっ、少しは話をしろ!!」「先に進めん!!」
三度目をやろうとする桂馬に、歩美は持っていた袋で一撃。
歩美「いーかげんにしろ!!」「もう近づくな!!」「最低男!!」
こんなんで本当にいいのか…?などと歩美にかまわずつぶやく桂馬だが、いち早く何かに気付き出て行く。
??「おっす!」
なんだろう、というふうだった歩美も、これにはギク、とこわばる。ちひろだ。
ちひろ「そろそろ接客交代でしょー?」「今から私やるからさ、」「エプロン貸してよ……」
じゃ…と歩美が着ていたエプロンをたたみ、ちひろに手渡す。
「何話してたの?」「桂木と…」「意外とさ…」「仲いいんだよね、あんた達。」
しどろもどろになる歩美に対し、ちひろは同じ質問を繰り返す。
2-B女子「お客来たよ、注文取って――!!」
歩美を残し、ちひろは客席へ。
ちひろ「へい、らっしゃ……」「いらっしゃいませ〜〜〜」「注文は?」
客「コーヒー。砂糖山盛り。」
厨房に向けて復唱するが、桂馬は戻ってこない。
退屈なのか、ストローの入っていた包みに水をたらす。その客は、リューネ。
私の名はメルクリウス…… 私も色々な旅をしてきたが… 心の迷宮を旅するのは初めてだ…
歩美「うるさいなぁ!!」
女子洗面所にて。メルの一人ナレーションが歩美にはうっとおしい。
「桂木の奴、どうして私のとこ来るのよ…」「行くならちひろの所でしょ!?」
「私とちひろの間まで…」「おかしくなっちゃうじゃない!!」「桂木…」「何考えてんのよ!!」
メル「普通に考えて…」「お前のことが好きなんだろうな。」
歩美「そ、そんな訳ないでしょ!!」「あいつ、昨日ちひろとデートしたのよ!!」
メル「私にとっては人間は十分不可解だよ。」「その点で何が起こっても不可解ではない。」
歩美「何したってムダよ…!!」「あの大バカ男……!!」
メル「気づいてないのか、アユミ…?」「もう答えは出てるんだよ……」
そのころ桂馬は、一人思案していた。どうあっても避けられないちひろを、どうすれば排除できるのか…?
そのちひろが、歩美のいる洗面所に来る。入り口のドアを背に、歩美に逃げる隙を与えない。
ちひろ「……話、」「あるんだけど…」
「私さ、」「桂木にふられちゃった。」「自分でも今回は、」「結構本気(マジ)かと思ったけど…」
「やっぱ、」「なんか違ったっす!!」
ちひろはいつもの笑顔に戻っている。
「あ、そんな訳なんで、」「私のこと桂木に話すのやめてくれん?」「あんた良いヤツだからさ――」「何か色々私のこと言ってそうだしさ。」
言うだけ言って、ちひろは洗面所を去っていく。別れ際。
「歩美…」「ありがとね。」
歩美「メルの言ってたこと…」「こういうことだったの…」
「私とちひろとの…間は…」「全然おかしくなってなかった……」「おかしくなってるのは…」「私だけ……」
「ちひろに…見られてるみたいで…」「私の…心…」「私こそ…」「最低だよ…」「ちひろが一番辛い時に……」「何やってんだろ…」
答えはもう出ている。あとはアユミがどうするかだ…そう言い残し、メルは鏡の中から消えてしまう。
リューネ「ちょっと兵隊集めてくんない?」「女神狩りでも、」「しようと思って。」
ヴィンテージ、ついに動く……次号!