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ツッコミは入れると疲れるのでそれはナシで。
じゃあ以下ネタバレ長文なのでイヤな人は見ないでくれ。
実際はもっと長いので一部カット、編集してあります。
・第9回のテーマは「原作」、スポーツマンガに必要なテクニックも満載
原作1.演出まで伝えるために、原作はネームで!
− なぜアメリカンフットボールを題材に選んだのですか?
オ 始まりは、やっぱり好きだったから。戦術を駆使して攻めるところがいいな。
アメフトは力押しでは絶対に勝てない。でも実際の激突で強いのはムキムキの
体育会系の選手たち。頭と体、両方が合体して最強になる。
そのあたりが、ああこれはマンガにしたら面白いかもしれないぞ!と思いました。
− 原作にはストーリー、脚本だけ、ネームまでといろいろなスタイルがありますが、稲垣先生はどこまで?
オ 僕はネームまで描きます。ここ10年くらいで少年漫画の演出ってすごく進化して
きています。そうなると文章でストーリーを描くだけでなく、ページ配分やめくったときの
インパクトなどの演出も考えてネームまでやって、作画の方に渡すほうがいいような気がしてるんです。
・ネームの写真のわきに「構図や動きまできっちり作りこんだネーム」の煽り
オ「アメフトに詳しいのは僕なので、村田君にきちんと伝えなくては、と思ってこの形に
なりました。別の題材だったら、ここまで描き込んだりはしないと思います(笑)」
原作2.ページ配分をスムーズに行うには?
− 原作のネームができあがる過程を教えてください。
オ 担当さんと打ち合わせのときにメモしたものを見ながら、パソコンで詳細なプロットを
作ります。次にそれを見ながらセリフもト書きも入った完全なシナリオを作り上げます
− シナリオの文章は細かくセクションにわけられ、ページ番号も入っていて、この時点で
すでにページ配分が決まっていることがわかる。
オ シナリオを書きながらページ配分とコマ割りまで考えるクセがついてきて、今は全部
同時にできるようになりました。シナリオを書き終える頃には、頭の中で、ネームはできて
います。連載が始まったばかりのときは、できあがったシナリオを見てから、ページをどう
配分してコマ割をどうするか考えていた。だから詰め込むのに苦労しました。
・フォーメーション図の写真のわきに「キャラがどう動くかを把握しておくために、試合中の
フォーメーション図をワンプレーごとに手描きで作成!1試合につき何枚も作成する必要が
あるので、大変な作業だ。」
25 :
2/3:2008/09/27(土) 19:03:49 ID:5/8qmSOP0
原作3.試合の組み立ては最初にコンセプトありき!
− 『アイシールド21』の大きな魅力は、ルールをよく知らない人でもわくわくしてしまう試合の描写!
オ 試合描写にはいくつかパターンがあると思うんです。詳細に試合を追っていくパターンと
ざっとした流れだけ追ってプレーの細かいところまでは描かないパターン。あとは何をやっている
かは全く描かず心理状態だけで持っていくパターン。『アイシールド21』は詳細に描くパターン
なので、1試合ごとに、この時間に難点入って、という試合経過と、ワンプレーごとのフォーメー
ション図も作っておきます
− 詳細に描くために、取材も頻繁に行かれるのですか?
オ 取材は、連載が始まる前に行って、さんざんためてあります(笑)
でも必要になれば急きょ行きます。一度、どうしても描きたいプレーの資料が見つからなかったので、
映画撮影のようにシナリオを作って選手の方に実演してもらったこともありましたね
− 試合ごとにこんな内容にしよう、というのはどう決めていくのですか?
オ 僕の場合は、今回はこういうプレーを見せよう、という”試合コンセプト”が最初に決まってます
それに合わせてフィーチャーするキャラも決まることが多いですね。1試合目の恋ヶ浜戦では
アメフトの点の入り方だけを見せて、次の王城戦で初めてちゃんとセナの”ランプレー”を描いた。
ランの次は、モン太が加わった賊学戦で”パス”を見せる。太陽戦では、栗田たちの”ライン”を。
その次のNASA戦で”ディフェンスを”。読者の方の興味がわきにくいものを後のほうに持っていきました
− 試合によっては1試合が連載1回分に収まらず、数回にわたることもあるはず。
1回分にどこまで入れて次につなげるか、も意識される部分なのでは?
オ 毎回すごく悩むところです。意味のないところで切ってしまうと『何、この終わり方』と思われてしまう。
やっぱり1回ごとに『次回が気になるぞ』という終わり方にしたいので。
でも試合の展開によっては途中で切る以外にどうしようもないこともあります。
− そういうときはどうするのですか?
オ ”人間ドラマ”に寄せますね。キャラクター同士の会話に持って行って次のヒキになるようにして、
その回は締めたりします。
原作4.スポーツマンガに必要な「リアルさ」とは?
− こんな風に、きっちりと試合を描く『アイシールド21』だが、「リアリティ」がありつつ「マンガとして
のおもしろさ」にも満ちている。実在のスポーツを題材にする場合、それぞれをどう出していけば
いいのでしょう?
オ スポーツマンガを作るときには、リアルとファンタジーの配合バランスをまず決める必要がある
と思うんです。新生チームは必ず負けるような現実的な作品なら、リアル100%のファンタジー0%
ボールがゴールを突き破って壁にめり込んだりする迫力ある世界観は、リアル30%ぐらいかな?
宇宙や魔界に行くのは、さすがにリアル0%でしょう。これは善し悪しじゃなく、マンガのタイプの問題
で、『アイシールド21』はりアル40%、ファンタジー60%くらいでいこう、と連載開始時に村田君と
話し合って決めました。
そこは最後までブレてはいけないところなので。セナが最初はまじめに特訓していたのに、最後は
空を飛んでビームを出すようになるのはまずい(笑)
フィールドの中では、基本的に嘘は描かない、と決めました。でもフィールドの外では超能力さえ
使わなければスーパーファンタジーでいいだろう、と(笑)
− リアルな部分であるフィールド内を描くときに、気をつけていることはありますか?
オ 実在するプレーをただそのまま描いたら、とても地味なものになってしまう。だから演出の
限りを尽くして、ド派手に見せるんです。物理としてありえるラインをぎりぎり綱渡りしている感じ
ですかね(笑)
たとえばセナの”デビルバットゴースト”は”クロスオーバーステップ”という基本技術の1つなんです。
でもそれが超高速だから分身しているように見える、というふうに派手に演出するわけです。
それと得点シーンがすごく地味でわかりにくいので、連載の途中からエンドゾーンに色をつけること
にしたんですよ。本当はNFLのように大規模な試合以外ではあり得ないことなんですけど、
”ここに入れば上がりなんだ”ということがある程度わかるようにしたかった
− ただリアルなのでも、ただ荒唐無稽なのでもないおもしろさは、こうした演出の積み重ねで出来上がるのだ!
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3/3:2008/09/27(土) 19:04:05 ID:5/8qmSOP0
最後に
− もともと日本ではあまり知られていなかったアメリカンフットボールというスポーツ。
それが今では『アイシールド21』の影響で多くの人から注目を集め、競技人口も増えている。
今のこの状況をどう思われますか?
オ 読者の方のブログとかで、”21番のユニホームをもらって大喜びする息子”みたいな写真を見たり
公園で『ヒル魔の”悪魔の○○○パス”!』なんて叫びながらアメフトボールを投げている子供が
いるのを見ると、すごくうれしいですね。『アイシールド21』を読んでいるから小学生は結構
アメフトのルールを知っている、という話もよく聞きます。
『SLAM DUNK』を読んでバスケを始めた人がたくさんいたように、『アイシールド21』を読んで
アメフトを始めたという人もいると思う。読んだ人がやりたいと思ってくれて、実際にやることができる。
僕は、それがスポーツマンガを作るうえでの、一番の醍醐味だと思っています。
おわり。