>>22 http://flareflair.blog50.fc2.com/blog-entry-44.html 第16話 少女の願いと少女の誓い
デオドラドの街の片隅でうじうじうじうじしているスイ。
未だにファランに負けたことを根に持って半泣きの顔で蹲っていた。
その背後からハイネ登場。
「あの、具合悪いんですか? もしかして……」
振り向いたスイがトロイに感染していないことを確認し、ほっとするハイネ。
「あ、大丈夫みたいやね、お取り込み中失礼しま……」
そこまで言ったところでスイのつややかな髪に目を止めるハイネ。
ほわーんとキラキラした目で見られたスイは気まずそう。
「何だよお前」
「綺麗な髪やなぁ……すんません、私ハイネ言います。もし嫌やなかったら、あなたの絵描かせてもらってええですか?」
「……勝手にしな」
嫌そうなスイだけど、ハイネのあまりのキラキラ具合に圧されて渋々承認する。
そして人気の無い路地で、スケッチブックにスイの横顔を描いていくハイネ。
スイはハイネの方をちらちらと気にしながらも大人しくそのまま座ってる。
ハイネはスイの髪の毛のラインを丁寧にデッサンしながら言う。
「スイさんの真っ直ぐな髪の毛、憧れるなァ……私、こんなぴょんぴょん髪がどうにかならへんかと思て一度思いっきり伸ばしたことがあるんですよ。でも、どんだけ伸ばしてもぴょんぴょんぴょんぴょん」
てへ、と苦笑するハイネ。スイはハイネと向き直る。
「その服、そういえばお前シスターか」
「あ、そうですよ。だから、あんまりこっちに来ないようにしてくださいね」
両手で×を作ってブロックサインを出すハイネ。スイは面白くなさそうにふんと鼻を鳴らす。
「うち(一人称が親しげに変化してる)、お姉さんが居たんですよ。お姉さんの髪もスイさんみたいにさらさら真っ直ぐで、撫でてるだけでえらい気持ちよかったなァ」
「なんだ、触りたいのか?」
スイはそういうとすっくと立ち上がり、背中から取り出した小刀で自分の髪の毛を斬ろうとする。
「わーーー!!駄目ーーーー!!!!?」
ぎゃあぎゃあと騒いでそれを制止するハイネ。
「何だよ、直接触らなかったら平気なんだろ?」
「そ、そうですけど……だからって髪の毛切っちゃ駄目です!!!!」
――回想シーン――
トロイで臥せってしまったハイネの姉が、消滅する前に自分の髪の毛をばっさり切ってハイネに渡していた。
何も残してあげることができないから、せめてこれをかつらにでも使ってくれと言っている姉。
さらさらの髪の毛を抱えて号泣するハイネ。
――回想終わり――
「そんなに綺麗な髪を切るなんて勿体無さすぎです!私はどうせシスターで髪の毛を伸ばせないから、せめてスイさんみたいな人の素敵な髪をもっともっと絵に描いてみたいんです……!」
「ふぅん……そろそろ切ろうと思ってたトコなんだけどな。お前がそんなに言うならもう少し伸ばしてみるか」
「はい!」
再びスケッチを再開する。スイもだんだん楽しそうになってきた。
が、突然石畳にころりと鉛筆が落ちる。
「どうした? ……!!!!」
スイが振り向くと、ハイネの手が透けて手袋が落ち、そして彼女自身ゆっくりと地面に倒れていくところだった。スケッチブックもパタンと落ちる(絵を描いている面が下になった)
「ご、ごめんなさい、実はうち、もうトロイでいつ消えてもおかしくないところやったんです。だからこの人気のないところで消えよう思てたんですけど、スイさんが居て……綺麗な髪の毛で……お姉さんみたいな……」
「おい、何やってんだよ、何で……」
「近づかんといて下さい!!」
ハイネに気おされるスイ。
「うちは大丈夫です。最後にスイさんの絵も描けて、もう満足です……」
震えながらもどうにか笑顔を見せるハイネ。うつ伏せに倒れて顔を上げながら、スケッチブックを愛しげに見やる。
が、そこにスイが仁王立ちしてた。
「おい、フード被れ」
「へ……?」
「いいから、さっさと被れよ!」