【サナギさん】 施川ユウキ30 【12月生まれの少年】

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657名無しさんの次レスにご期待下さい
むかしスタジオボイスに書いた施川たんの詩がよかったのでここに無断転載したくなった

残機だけはくさるほどあるキミに        施川ユウキ

残機だけは腐るほどある君へ。マリオへ。
君の残機は腐るほどある。「残機」という呼び方に違和感を覚えるかもしれないが、命の数だと思ってくれていい。
シューティングゲームにおける残機、所有する自機数と同じ扱いだ。シューティングゲームでは、自機が被弾すると
爆発して一機減る。その場合、普通に考えてパイロットは死亡しているだろうが、パイロットの命には誰も興味を持たない。
それはどうでも良い話で、重要なのは戦闘機の数、つまり残機数だ。

残機だけは腐るほどある君へ。マリオへ。
君を数える単位は「機」だ。パイロットが、君という「機」に乗って君を操縦している。そう仮定するといい。
余計なことを考えなくて済む。なぜか君は、敵に触れた瞬間死ぬ。敵が殺す訳ではない。クリボーもノコノコも殺意は無い。
普通に歩いてるだけだ。触れた瞬間君が勝手に死んでいる。しかし、君が上から踏みつけて相手を殺す場合は死なない。
完全なるコミュニケーション不全だ。完全なる不全とは奇妙な言い回しであるが、要するに君は、多くの局面において
他者と間に死を介在させた関係性しか結べないでいる。死に取り憑かれている。だが安心して欲しい。残機は腐るほどあるし、
「ドラゴンボール」の終盤のように死も安くなった。君は好きなだけ死んで良いし、殺して良い。

残機だけは腐るほどある君へ。マリオへ。
アンデルセンの童話でパンを踏んだ娘は地獄に落ちたが、君は亀を踏み続け残機を増やした。踏まれながら亀は、
甲羅の中で屈辱に満ちた表情を浮かべ、何らかの報いが君にある筈だと神を思う。神にすがる。しかし君の残機は
軽快に増え続けていく。神は、パンを踏んだ娘を地獄に落としたが、君には腐るほど残機を与えた。君は何度でも死ねる。
延々と死の体験を繰り返す事が出来る。たとえ、君が望まぬとも。此処もまた地獄なのかもしれないと、
僕は他人事のように思うんだ。
658名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/10/20(月) 00:05:54 ID:2kQ2Aagt0
残機だけは腐るほどある君へ。マリオへ。
君が、クリボーがメットに変わった世界で二周目の冒険を始めてから、僕は君の亡霊に悩まされている。
その増殖したメットの事だ。メットはその名の通りヘルメットの形状をしている。その中身は暗闇だ。
僕は、今まで無残に死んできた君が、ヘルメットを被った生首の姿で、君自身の元に復讐に現れたのではないかという
妄想に捕らわれている。腐るほどある残機は、君の命は、その数量に反比例して不当に価値を落とされた。
その報いがメットの亡霊達だ。終わりの無い復讐のセルフスパイラル。神にすがったあの亀を、僕は思い出す。

残機だけは腐るほどある君へ。マリオへ。君は正確には無人機だけど、こう理解してくれても差し支えは無い。
君という「機」に乗って君を操縦しているパイロットは僕だ。僕を含む不特定多数のユーザーだ。自分勝手な
上位世界の神々だ。君に仮託された想いは正義ではない。愛でもない。「暇つぶし」だ。僕を含む多くのユーザーが
飽きるまで、君は暇つぶしの為に幾度と無く死んだ。腐るほどある残機も、我々は気まぐれにリセットした。
世界を繰り返し再構築させた。知っているかい?君の世界は何度もリセットされ、君は何度も同じ道筋を辿って
同じ冒険を反復しているんだ。ひょっとしたら我々も、上位世界の神々に同じことをされてるのかもしれないと、
僕は時々想像している。

残機だけは腐るほどある君へ。マリオへ。これで最後になるけど聞いて欲しい。ウィキペディアによれば、
腐るほどある残機も127をリミットに0機に戻されるそうだ。「機」で数えられる君も、たった一つの命になれば、
「人間らしさ」をほんの少しだけ獲得する事が出来るのかもしれない。そんな事を、僕は今更考えたりもするんだ。

残機だけは腐るほどある君へ。マリオへ。
腐るほどある残機で、無限に生き無限に死にながら、命の神話を紡ぐ君へ。


  ・・・・・・いろんな意味で施川たんらしさが出てる貴重な一作だと思う