……が、雷句氏の応えは私が予想だにしないものでした。
「自分の弟子ということで、辛い仕打ちを受けるかも知れな
い。連載の話自体がなくなるかもしれない。
それでも、もし可能であるのなら、サンデーで連載して欲
しい」
と、そう言ったのです。
もう私はなにがなんだかわかりません。
訊けば、氏は今更ながらに。否、最初から悔やんでいるのだ、
と。
誰かがやらなければいけないことだった。
でも、それは自分でなくても良かったのではないか。
あるいはもっと上手い方法があったのではないか。
今からでも取り返しのつく方法があるのではないか。
そういったことを延々悶々と考え続け、この1ヶ月で碌に眠
ることも出来ないでいるのだそうだ。
事を公にする。その心は半年近く前から決めていたそうだ。
真っ先に相談したのはやはり雷句氏の師匠であるF氏だった。
F氏は雷句氏の考えに反対しなかったと聞きました。
それどころか「出来る限りのフォローをする」と心強い言葉
をくれたのだとも言いました。
やがて話は雷句氏の兄弟子でもあるA氏にも届いたと言いま
す。
A氏もまた、雷句氏の味方だったそうです。
今回の件が公になれば、小学館は大きく揺らぐだろう。
当然サンデー自体も例外ではない。
雷句氏はそう考えていた、と言います。
そして同時に、そうなることは自分の本心ではない、とも。
ここで雷句氏は大きく迷ってしまったのだと。
提訴するべきではないのではないか、と。
しかしそんな折に、信じられないことが起きたのだというの
です。
それはF氏がサンデーで連載をするという事件でした。
雷句氏には信じがたいことでした。
公言こそしなかったものの、一度はサンデーと袂を分かつた
F氏が、なぜ、今このタイミングで!?
と。
そしてさらに間もなく、A氏までもがサンデーに復帰。
もうこの件で雷句氏は裏切られたか、或いは捨てられたのだ
と言わんばかりのショックを受けたと言いました。