真帆良学園学生寮からそう遠くないとこに存在する真帆良大学病院。
そこの中のとある個室の病室――――――
その空間の真ん中のベッドで、全身に沢山の傷をこしらえて
たまに少し痛みで呻きながらも何の問題も無く眠りに落ちている少年、
真帆良学園中等部3−A担任・ネギ・スプリングフィールド の傍で……
3−A出席番号5番の保健委員・和泉亜子 は、
ただひたすら、その紅い目が白目まで赤くなる位に、
立ち尽くして自責の涙を流していた……。
「先生……いや、ネギ君……。
なして、なして君ばっかり痛い目に会わなければいけないん?
なして、なして……そない痛い目に会うてまで、ウチを庇うん?
なして、なして……ウチの大事な親友…まき絵、裕奈の分まで傷つくん?
ホンマなら……君の傷……全部、ウチに付いているべきやっちゅうのに…?なしてや…なして…?」
そう自責の念に駆られた独白を終えた後、亜子は、身に纏っている総ての衣類を脱ぎ捨て、右脇腹を眺める。
そこには……クラス内では公然の秘密となっていた、一度見たら忘れられない強烈な傷痕が……
見事に無くなっており、透き通るような綺麗な皮膚によって、流麗なラインを再び形作っていた――
「あの傷が…そして、あの傷と一緒に付きまとっていた過去も「ツキモノ」も消えたのは…
ホンマは……ごっつう嬉しい筈なんやけどなぁ……。何やろう……ホンマ、ちっとも嬉しゅうないなぁ。
やっぱり、アレやのか……ウチの傷が無くなった代わりに、ネギ君が傷だらけになったからやのかな…。」
そう言った後、死んだように眠るネギのシーツと、病院服を剥ぎ取り、
静かに横に添い寝するように身を置き、傷を一つずつ優しく舐めていった……。
「ウチ等より上の年代の男の子やったら「男前やなー」と笑い飛ばせるやろうけど……
流石にネギ君の歳でこれはそんな冗談で笑い飛ばせへん……過酷過ぎるでホンマ…。」
悲しみに打ちひしがれながら傷を舐める亜子の脳裏に、今に至る短いようで長い経緯が駆け巡る――――――