「あ……、ちづ……姉?」
「千鶴アルか。どしたネ、そんな恐い顔をして」
「夏美ちゃんから離れなさい!」
古はやれやれと言わんばかりに首を振ると、
「……え?」
次の瞬間、古は千鶴の目の前に移動していた。顔と顔が触れ合わんかの距離でニヤッと笑い、千鶴の胴に
両手を押し当て――
「はっ!」
短く息を吐くと、一瞬遅れて千鶴の背中が爆ぜた。肉片がびちゃっ、と床一面に飛び散る。腰からほとん
ど真っ二つにされた千鶴は、脊椎の支えを失い垂直に崩れ落ちた。倒れた時にねじれ、足と胴体が逆を向いている。
「ちっ、……ちづ姉ぇぇっっっっ!」
夏美がすごい悲鳴をあげている。古はちょっと顔をしかめながら夏美の下へと歩いて戻った。
「ちづ姉っ、ちづ姉っ、ちづ姉っ、ちづ……」
「うるさいネ」
古が夏美の喉をひと突きにした。指を深くめり込ませ、かき混ぜるように動かすと、夏美はそれきり声を
出せなくなった。
「さあ、ゆっくり楽しむアルヨ」
古は両手を持ち上げ、指をくねくねと動かすと、その指で夏美の全身を貫いた。こめかみ、耳の裏、乳房、
腋の下、太もも、下腹……。突かれるたびに夏美は体を震わす。全身の穴という穴から血や体液を垂れ流し
悶える、その姿はまるで悦んでいるようにさえ見えた。小便が勢い良く放物線を描く。
「ふむふむ、勉強になるアルヨ」
眼窩に指を掛け、ぐいっと力を込めると、目玉がにゅっと飛び出した。夏美はよだれを垂らして恍惚の表
情を浮かべる。古は飛び出た目玉を指先でつまみ上げ、ひと通り観察すると、ひょいっと口に放り込み舌の
上で転がした。
「ほれはなかなかおいひいアルヨ、なふみ」
奥歯で噛み砕く。ぐちゃっと目玉が破裂した。そのままくちゃくちゃと何度か咀嚼し、ぐいっと飲み込む。
「次はどこにしようカ……」
腹に掌を当て、ぐっと力を込める。手首のところまでずぶっとめり込んだ。腹の中でぐるぐる手をかき混
ぜると、それに合わせて夏美の体が踊った。ぐっと何かをつかみ、引き出す。どくんどくんと脈打つピンク
色の筒。引っ張るとどこまでも伸びた。引きちぎり、食らう。口の中に血の匂いが広がる。
「内臓も悪くないネ。うーん、あとはやっぱり……」
古はくり抜かれた眼窩に指を掛け、力を込める。ミシミシと音をたて、頭蓋が裂ける。ピンク色の脳が、
隙間から覗いた。古はペロリと舌を出すと、腕に込める力を増し……。
明日菜は顔をしかめながら部屋を見回した。
「くーふぇの奴、これはこのかといい勝負ね。……これで二人、えーっと……、刹那さんを含めずに数えて、
合計で……八人か」
あと一息だ。ネギに知られる前に、片をつける。やれるか? 大丈夫、やれる。なぜなら私は一人じゃな
い。仲間がいるから。一人では無理でも、私たちなら、きっと。
目を閉じ、犠牲者に黙祷を捧げると、明日菜は部屋を後にした。次の標的に向かうために……。
「ねぇ、ここ、見つからないかな?」
怯えた様子のハルナは、夕映の手を握りながら、不安そうにあたりを見回していた。
「だ、大丈夫ですよ、きっと」
根拠のない励ましだと思ったが、それでも今は夕映がいてくれるだけで助かっているのは否定できない。
一人で逃げ回っていたらとても、気持ちが保たなかっただろう。感謝せねば。夕映だけではない。もう一人、
のどかにも――
「あれ? のどかは?」
それを聞いた途端、夕映が何やらあわてだした。不審がるハルナ。そして偶然か、それとも第六感が働い
たのだろうか、ふとハルナが振り返ると――、そこには手にロープを持ったのどかが立っていた。
「のど――」
素早くロープをハルナの首に掛けると、のどかは一方の端を夕映に渡し、
「引いてっ!」
言われるままにロープを握り、目を閉じてぎゅっと引く。ぐげげっ、という呻き声が聞こえた。