上場で株主による雑誌の路線変更を迫らせる恐れがある。
短期利益しか追求しない株主に雑誌も連載も作家も壊されてしまう。
少年ガンガンの歴史(7)ブレイド騒動とその後の経緯、そして現在へ
http://kenkyukan.fc2web.com/enix1/gangan-history7.html ガンガン編集部の性急で強引な改革に一部の編集者が反発し、彼らが揃ってエニックスを離脱、新会社(マッグガーデン)を立ち上げ、
そこで新雑誌「コミックブレイド」を創刊してしまいます。これが、有名なブレイド組の離脱騒動(エニックスお家騒動)であり、
これによりガンガンは混乱の極地に達します。
・なぜ、離脱までしたのか?
しかし、出版社を抜けて離脱までしてしまうとは穏やかではありません。なぜ、一部の編集者がそこまでの行為に出たのか?
エニックスを離脱した編集者たちの多くは、かつての「エニックスマンガ」を育ててきた主要メンバーであり、
少年マンガに対するこだわりが薄く、それよりは独創的なマンガを作っていこうという意思が強い人たちでした。
彼等にとって、今のガンガンの改革路線(極端な少年マンガ路線)は我慢できないものだったのです。
実際に、離脱グループの中心人物であり、ガンガンの元編集長だった保坂氏は、新雑誌の創刊時に次のようなコメントを残しています。
「この雑誌では、少年マンガや少女マンガといった既存の枠組みにとらわれない、自由で独創性のあるマンガを作っていく」
このコメントから見ても分かるように、エニックス離脱組は、少年マンガの復活には全く興味が無く、
かつてのエニックスマンガのような自由なマンガ創りを続けることを望んだグループであり、
もはやガンガンの改革路線とは正反対の立場だったのです。したがって、
彼らと、ガンガンで改革路線を続けようとする編集者たちとの間には妥協の余地は全くなく、
ついにはエニックスからの離脱という最悪の決断にまで追い込まれたものと思われます。
・エニックス雑誌全体に及んだ影響。
そして、これはガンガンだけでなく、エニックスの姉妹雑誌全体におよぶ大騒動となります。
ガンガン以上に大きな影響を受けたのが、よりコアなマンガ誌であった「ガンガンWING」で、
主要な連載陣が根こそぎ離脱してしまい、一時は雑誌の存続さえ危ぶまれるほどの壊滅的な打撃を受けます。
影響は少女マンガ誌であった「ステンシル」にも及び、ここでも雑誌の中心だった人気マンガ家ばかりが数名抜けてしまい、
やはり大きな影響を受け、一気に泡沫雑誌へと転落します。
(唯一、ファンタジーコミック誌であった「Gファンタジー」だけは影響がありませんでしたが、
こちらはこちらで別の編集者グループが離脱してしまい、やはりかなりの混乱が起こります。)
ガンガン2006年の危機・後編
http://kenkyukan.fc2web.com/enix1/gangan-crisis2006p.html ここ数年来、この方針が大きく変わり、それ以外のゲームコミックが頻繁に連載化されるようになります。
そして、その方針変更のきっかけとなった直接の大きな出来事があるのです。
それはずばり、スクウェアとエニックスの合併です。
スクウェアとエニックスが合併したのは2003年4月ですが(合併発表は2002年11月)、
最初のうちは社内のコンテンツに大きな変化はありませんでした。
旧スクウェアのスタッフがそのまま旧スクウェアのゲームを開発し、
旧エニックスのスタッフがそのまま旧エニックスのゲームを開発するという状態です。
そして、これは今現在でもさほど変わっておらず、相変わらず合併以前と比べても双方のゲーム性にさほど変化は無いように感じられます。
しかし、そんなスクウェア・エニックスの中でも、合併の影響を受けて大きく変わった数少ない部署があります。
それこそが、実は旧エニックスの出版事業の部署であり、その中でもガンガンというマンガ雑誌の変化は非常に露骨なものでした。
元々、ガンガンはエニックスの雑誌であり、そこに載るゲームマンガとなると、前述の「ドラクエ」「トライエースRPG」のような、
エニックスの人気ゲームが中心でした(というか、ほぼそれがすべてでした)。しかし、スクウェアと合併したことにより、
旧スクウェアの人気ゲームもガンガンで連載しようという運びとなり、以後、その手のゲームマンガが積極的に連載されるようになるのです。