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名無しさんの次レスにご期待下さい:
「…さてな。暇つぶしだったのかもしれんし、ぼーやを私に繋いでおきたかったのかもしれん。
ひょっとしたら、悪い魔法使いとして亡き者にしようとしていたのかもな」
くくく、と自嘲する。
不死の存在ともあろう自分が、どうもあの少年には狂わされっぱなしだ――と。
「…なに、判る必要もないさ。性急に出さなくてはならん結論でもない。
ぼーやにはたっぷりと足のよさも教え込んだしな。忘れられはすまいよ」
また来たときは何を教えてやろうか。骨の髄まで調教してやりたい気持ちにも駆られるし、
逆に――唾棄すべき考えだが――抱いて欲しいなんていう考えまで浮かんでくる。
「そのときは茶々丸。…ちゃんと、手伝えよ?」
にやにやと笑いを浮かべてエヴァンジェリンが告げる。黙り込む茶々丸。
――この従者の、少年に対する感情も興味深いことだしな、と、内心で付け加えた。
ぼーやは明日、目が覚めてからウチで寝ていってしまったことで慌てるだろう。
それを想像するだけで笑いがこみ上げてくる。
神楽坂明日菜あたりは何か言ってくるかもしれんが、――それも見物だ。
慌てるぼーやも、その周りの人間も。皆、面白い――……。
そして、窓の外を見る。月明かりが煌煌と森を照らし出していた。
雨の降る気配はない。
――明日も晴れそうだ。
日光を克服した吸血鬼の真祖であるとはいえ、日光はあまり好きではない。
それでも、まぁ。
暑すぎるのは願い下げだが、こんな日々なら、晴れもいいか――と、かすかに思いを馳せた。