「ふーむ、ネギ坊主はいじめられて興奮する変態さんだったのでござるか」
納得した、といった表情で腕組みをしてつぶやく長瀬楓。
「あぅ、そ、そんなことはっ……!」
「何言ってんの長瀬さん、少年がこういうシチュで勃起するっていうのがロマンなんじゃない」
そこに割り込んで、柿崎美砂が持論を力説する。
自分の思い通りにならず、むしろ硬さを増し続けるペニスを見下ろしたままでネギは嘆いた。
「違うんですってば〜!」
(……もうやってること完全に性犯罪だし……。ってか10歳で勃たせんなよ、エロマンガじゃねえんだから……)
こめかみを押さえながら長谷川千雨が赤面してそっぽを向き、…すぐにチラチラと盗み見をし始める。
――と、わいわいと騒ぐ生徒たちを割って、二人の少女が歩み出てくる。
3−Aの頭脳トップの双璧、眼鏡に三つ編みの葉加瀬聡美と、お団子頭の中華娘・超鈴音であった。
葉加瀬は手に、黒い生地で出来た何か穿くものを持っている。
「ふっふっふ、これこそがロボット工学研究会と生物工学研究会の技術の集大成!!
布地は限りなく薄いのに伸縮性と強靭さに富み、
なおかつ生地の上からでもまるで直に触れられているのと変わらない被触感を追求!
超高気密性を誇り、なんとお年寄りが穿いたままお漏らししてもこぼれないというスーパースパッツ!」
「――これを、ネギ坊主には穿いてもらうネ」
高々と演説する葉加瀬に、一言だけ付け加える超。
「え……っ、そ、それは……」
どうして、自分がスパッツを今穿かされなくてはならないのか。困惑するネギ。
「それを説明しているヒマはないネ。さ、穿かせるヨ」
ばっ、と超が手を振ると、葉加瀬からスパッツを受け取った茶々丸がネギの脚を持ち上げる。
丁寧に両足を通し、太腿に、そして股間へと穿かせていく。
「ちゃ、茶々丸さん……っあ!」
密着性の高い生地は、ネギの感じる場所をことごとく擦り上げていった。
ずりずりと。視線で半立ちになっていたペニスは、どんどん隆起していってしまう。
「…先生、申し訳ありません。私も、こんな形は本意ではないのですが――」
「っ、あぅ…、ほ、本意……?」
「――っ、いえ、なんでもありません――!」
がしゅ――、とジェット噴射で後退する茶々丸。呆然としてネギはその姿を見送った。
――それ以上、近づいて来る生徒はいなかった。
全員が遠巻きに、ネギの股間を見つめている。
「――え、なんで、こん、なっ……!」
むくむくと。視線の熱さに呼応するように勃起していくペニス。
ぴっちりと下半身に張り付くスパッツには、ネギの成長しかけのペニスの形がくっきりと浮かび上がってしまっていた。
「あうっ、は、恥ずかしいですっ――!」
反射的に股間を隠そうとするネギ。
――その瞬間、光が瞬いた。その主は、デジカメを持った朝倉和美。
「ダメだよネギ君、被写体が一番エッチなところ隠しちゃ。
……また隠したりしたら、今度はこの写真…バラ撒いちゃうからね?」
「…………」
わなわなと震える手を、どうにかして身体の脇に下ろす。
「オーケーオーケー。…あ、そうだ。せっかく下にスパッツ穿いてるのに、上がスーツはいただけないなー。
ネギ君。上、全部脱いじゃって?」
抗う術は皆無だった。
――いや、ひょっとしたらあったのかもしれないが、ネギが従うことを選んだ以上は、その選択肢は永遠に無くなってしまったと言えた。
恐怖にか、それとも快楽か。
ぷるぷる震えながら少年が衆人環視のもとで服を脱ぐ姿は、特殊な色気を感じさせた。
スーツ、ネクタイ、ワイシャツ、そして肌着。すべて脱ぎ終え、教卓の上に置く。
「…………こ、これで……、いいですか……?」
誰にともなく、その場の皆に伺う。周囲からは熱い息を吐く音、唾を飲み込む音くらいしか聞こえない。
しばしの――沈黙。
そして、再び。誰のものか判らない――けれど、確かに教え子の声が、聞こえた。