☆魔法先生ネギま!☆ 23時間目

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ネギ・スプリングフィールドが担任を務める麻帆良学園3−Aは、超人揃いの集団である。
運動能力に秀でたバカレンジャーをはじめとして、裏の世界に名を馳せるスナイパー、剣士、
果てはロボ、吸血鬼、幽霊──と、様々な豪傑(?)が肩を並べている。
そんな超人軍団の中に、一人の天才と呼ばれる少女がいた。
その名を超鈴音。
天才的頭脳に卓越した身体能力(武道四天王、バカレンジャー達にはさすがに追随できないが)。
更に、オーバーテクノロジーを駆使したかのような発明の数々。
すべてを手の内で操るかのように見える彼女は、まさにハルクマシーンかイチバンマスク並みの完璧超人と言えた。

──謀略を企てる。
──愛すべき血縁者、ネギ・スプリングフィールドのために。
──否、自らの抑えきれぬ欲求を満たすために。
──しかし、自分のことはまだ明かしてはならない。
──表に立ってしまっては気取られるかもしれない。
──あくまでも自分の立ち位置は出資者・技術提供者でなくてはいけない。
──ならば、簡単なこと。

3−Aすべてを巻き込んで、狂わせて(狂っていることを正常と認識させて)しまえば、いい。

出席簿を抱え、子供先生が麻帆良学園中等部の廊下を歩く。
てくてくとゆったりとした足どりで。
今日の朝は、珍しく遅刻ギリギリでの登校を回避できた。
「たまにはこういうゆっくりした朝もいいねー」
予鈴が鳴ったせいか、すでに廊下に人はいない。
ネギが肩に乗せた白いオコジョ、オコジョ妖精のアルベール・カモミールが腕を組んでうんうんと頷く。
「そうだぜアニキー。いっつも姉さんたちと走ってばっかりだからよぉ、おれっちも疲れちまって…」
「カモ君はいつも誰かの肩に乗ってるだけじゃない」
そんな軽口を叩き合いながら歩き、やがて3−Aの前へとたどりつく。

────シィ…ン、と。静寂。
扉の前に立った瞬間、違和感を覚えた。
静かすぎる。自慢ではないが、3−Aの騒がしさは並みではない。
授業前でも外へ響くほどで、新田先生に叱られていることも少なくないのだ。
それが、物音一つしない。
不気味さと、不穏な空気を感じた。
「──どういうことだろう、これは……」
魔力を探ってみるが、不審な魔力の類は感知されなかった。
「…カモ君、どう思う…?」
「いたずら双子が何か仕掛けてるんじゃねーかなー?」
「……そうかな…?」
それも無くはないか、とネギは納得した。
先生なのだから、生徒の遊びには付き合ってあげなくてはならないだろう、と思い直す。
──実際は「付き合う」どころか翻弄されることの方がはるかに多いのだが。
「よし!」
気合を入れて、教室の扉に手をかけた。

それが退廃の都への入り口であると知らずに、少年は境界を踏み越える。
──いつの間にか、肩の上のカモの姿は消えていた。

「皆さん、おはようございまーす」
いつものように元気にあいさつをしながら、教室へ入る。
ふと見回すと、生徒は全員整然と席についているように見えた。
(…警戒しすぎだったのかな?)
後ろ手に扉を閉め、教卓について出席簿を置く。
と、そのとき。ネギは漂う空気に微かに甘い匂いを感じた。
くんくん、と鼻を鳴らす。
(…なんだろう、いいにおい……)