☆魔法先生ネギま!☆213時間目

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27名無しさんの次レスにご期待下さい
「せっちゃ―――ん! ウチはここぉ――――――っ!」

「お嬢様!」
 刹那の顔がぱっと明るくなる。今だ敵の手の内にあるものの、呼びかけてきたのは女子寮で魔
に憑かれて以来、眠り続けていた本物の木乃香だった。木乃香の心の中で、助けにきた刹那の
呼びかけに本物の木乃香が目覚め、魔に抵抗して現れたのである。
「黙れええええっ!」
 偽の木乃香と刹那が二人がかりで、縛られている木乃香を押さえ付ける。
「せっちゃん、口塞いで!」
「うん!」
「ゔゔゔ、ゔ―――っ!」
 偽者の木乃香に鎖を締め付けられ、刹那に口を塞がれて、木乃香は苦しそうに顔を歪めた。
「木乃香ちゃんのところに行かせるなぁ! 全員でかかっちゃえ―――っ!」
 美砂がマイクを片手に叫ぶと群衆がうねり、おぞましい数で刹那に殺到する。その頭上ではハ
ルナが具現化した燃え盛る隕石が4つ、夜空を炎色に染め上げている。

「『メテオ(だ―――あ゛」
 ハルナの言葉が途中で止まる。美砂も真上を見上げたまま静止してしまう。たった今、襲いかか
る群衆の最前にいたはずの刹那が何時の間にか、美砂の真上を飛ぶハルナに斬り込んでいた。
「い、れ、ん……」
 群衆の中に落下するハルナ、続いて頭上で燃え盛る4つの隕石が指揮官を失い、そのまま真下
で群れる美砂とその奴隷たちに向けて落下する。衝撃が近衛の姫の軍勢を呑み込み、美砂とハ
ルナが煙のように消えた。複数の爆風は互いに衝突しながら波状に麻帆良に広がり、一帯を焦土
と化しながら拡散していく。
 焦土の世界にピシピシとにヒビが走り、そのままガラガラと崩れて消滅し始めた。偽者の木乃香
は本物の木乃香を連れて闇に融けるように逃げ、本物の刹那がそれを追いかける。その途中で
へらへら笑いながら偽者の刹那が立ち塞がった。
「ここは通さな、あ―――?」
 「い」を言う前に本物の刹那が偽者を斜めに叩き切る。偽者は煙のように消えていった。
 壊れていく世界の中を、木乃香を追って刹那は駆けていく。
「さあ、お嬢様を解放してもらうぞ!」
 燃える学園都市が消えた後に残されたのは狭い、球体の闇の世界だった。刹那が剣を向ける先
には縛られた木乃香と、オレンジの着物を纏う偽者の木乃香がいる。おそらく外見は単なるイメー
ジだろうが、実質は魔の元凶であるその「木乃香のカタチをした者」は、本物の木乃香を解放する
つもりはないらしい。
「ゔゔゔ、ゔ―――っ!」
 偽の木乃香は本物の木乃香の口を手で塞ぎ、余裕たっぷりの笑みを浮かべて刹那を黙って見
ていた。刹那の刀を握る手に汗が滲む。相手はあれだけ酷く女子寮で暴れた敵であり、先ほどの
従者たちのように簡単に排除できるとは思えない。実力差は歴然としており、現実では刹那は従
者一人にも勝てないだろう。
(ここからが問題だ―――)
 偽の木乃香から、本物の木乃香をどうやって取り返せば良いのか?
 それは、本物の木乃香が偽の木乃香に抵抗して打ち勝つしかない。
 実際問題として刹那は木乃香の心の魔を狩っているが、それは木乃香を救う手助けであって直
接救う事には繋がらない。場所が木乃香の心である以上、本物の木乃香が刹那に協力して、魔
に怯えず全力で抵抗しなくては勝利することはできない。逆に万が一、木乃香が諦めたりした場合
は刹那が逆に魔に殺されかねない。そうなれば現実の刹那は廃人である。
「ふふふっ、せっちゃん、あれほど可愛がってあげたのに、だま足りへんのかなあ―――」
 闇がざわりと蠢き、にゅるにゅるにゅると無数の黒い触手になって刹那に殺到した。