☆魔法先生ネギま!☆213時間目

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21名無しさんの次レスにご期待下さい
「試作アイテム『ブラックリスト』―――ふふん、なかなかのモノだね」
 のどかの黒い本をアーティファクトで創ったハルナが、まるで自分の子供を誇る母親のような笑
みを浮かべて、誇らしげにそう言った。
 のどかの黒い本、美砂や円には恐怖と畏敬の念を込められて「アレ」とだけ呼ばれるその物体
は、ハルナが非戦闘員ののどかの為に創り与えた広域攻撃兵器だった。
 モデルにしたのはのどかのアーティファクト「魔法の日記帳」である。有効射程範囲は本から20
0メートル。その範囲内にいる対象の名前を唱えれば、ブラックリストは自動的に対象の脳内情報
を読み込み保存する。そこで対象の名前を墨で塗り潰すと、対象の意識は墨に染まったように暗
転して停止し、そのままのどかの命令を聞く傀儡に成り果てる。解除するには、ブラックリストから
該当するページを破り取らなければならない。
 即ち、攻めてくる敵の名前が分かっていれば、名前を言う→塗り潰すという数秒の動作によって
その敵を精神崩壊させて奴隷にできる。のどかの持った本はそういうモノなのである。
「さてと、私も好きなようにやらせてもらおうかな」
 ハルナはにやりと嗤いながらスケッチブックを開いた。スケッチブックが光り輝き、其処に描かれ
た絵が実体化していく。集中線の効果で接近してくる雰囲気を演出し、トーンで炎の演出をしたそ
の物体が出現すると辺りには熱風が吹き始め、夜空は燃えて明るくなった。

 不吉な、燃える夜空を眺めていたエヴァはハルナが具現化したモノの正体に気付いた。
「逃げるぞ茶々丸! はっ、茶々丸……」
 茶々丸はダメージが大きく、動けるようになるにはまだ数分を要したはずだった。しかし、恐らく
名前を利用する魔術にやられた楓はさておき、茶々丸は復活できる。
(まだ、パートナーを見捨てて逃げるほどには落魄れてはいないか―――)
 魔力は限りなくゼロに近い。しかしエヴァは精神を集中し力を振り絞る。
(百戦錬磨の吸血鬼、命まで燃やせば不可能ではないはず!) 
 エヴァの心の叫びに応えるように、漆黒の翼がばさりとを広がった。鬼気迫る顔でエヴァが逃げ
る準備を整える。そのまま茶々丸の方を向いた……そこには椎名桜子がいた。桜子は巨大なピコ
ピコハンマを振り上げて倒れた茶々丸を狙いながら、エヴァの方を見てにやりと嗤う。思考が沸騰
した。エヴァは翼を動かして全力で茶々丸の元に向かった。
「止めろおおおおおお―――――っ!」
 桜子のアーティファクト「破魔の小槌」は無生物を粉々に砕く能力を持っている。茶々丸との相性
は最悪だった。そのアーティファクトを持った手が、ゆっくりと振り下ろされていく。
 エヴァの目から熱い液体が溢れ出した。もう間に合わない。それは確実だ。逃げた方がいい。し
かしエヴァは止まらず、いや、止まれず、僅かな希望をガラにもなく信じて猛スピードで飛んだ。
「はい、残念でしたぁ〜」
 適度に力を抜いたクイズ番組の司会者のような声を出して、桜子がピコピコハンマを茶々丸に振
り降ろした。変化は一瞬だった。アーティファクトに触れた茶々丸がびくんと動き、そのままボディ
が風船のように弾けた。腕と脚と頭部が飛んでそれらも粉々になっていく。とぱらぱらぱら、と茶々
丸が散っていく。いつも猫に餌をやっていた茶々丸が、美味い茶をいれてくれた茶々丸が、自分に
尽くしてくれた茶々丸が、
「きゃはははははははははははははははははははははははははははははは―――っ!」
 桜子の高笑いが響き渡る中、風に飛ばされて消えていく。影も形もなく、まるで存在すらしていな
かったかのように、そこらの砂に混じって四散していった。
「貴様あああああ―――っ!」
 向こうでは近衛木乃香が美砂の兵隊たちの血を吸っていた。吸血鬼にとって血液は貴重かつ重
要なエネルギである。見た感じでは楓は再起不能、茶々丸は散った。近衛木乃香は復活する。あ
そこまで追い詰めた近衛の姫が復活する。この戦いは、全て無意味になる―――
 その時、ぶわぁ! と猛烈な熱気がエヴァの頬を撫ぜた。ハルナに具現化されて夜空を燃やす
その物体が、引き寄せられるように一直線にエヴァに突っ込んできたのだ。