☆魔法先生ネギま!☆213時間目

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 両者が渾身の力で呪文を放ち、両者はそのまま相手の呪文で吹き飛ばされた。エヴァは地面を転がっていき、倒れた木乃香の着物は限界を超えて呪符に戻っていった。
「う、ぐううう……後、少しというところで………」
 苦しそうに呻き声を上げるエヴァの前で、木乃香がずりずりと地面を這っていく。その先には着物の懐から落ちた仮契約カードの束が転がっていた。
「させるか……うぅ……」
 エヴァは攻撃魔法を使う魔力が残っておらず、木乃香が仮契約カードに近づくのを阻止できない。
 と、その時、
 パチパチパチと拍手しながら、
 その黒装束は現れた。

「いやいや、両者いい勝負でござった」
 携帯を肩と首に挟んで穏やかな微笑を浮かべながら、長瀬楓は闇の中から溶け出すように現れた。その細い目に木乃香とエヴァを交互に映し、にやりと口を三日月に歪める。
「楓ちゃん………? まさか、記憶が残ってたん……?」
「長瀬、楓か……いいところに来た! 早く! そいつにトドメをさせ!」
 仮契約カードに手を伸ばした木乃香がそのまま固まった。エヴァが期待の声を上げる。
「まあ、慌てない慌てない」
「……?」

 何を言っているのだ? とエヴァの表情が語っていた。楓はしかし視線を木乃香に移し、にっこりと人を安心させるような笑みを浮かべて言った。
「仮契約の方法を教えるでござる。そうすれば、この場から逃がしてさしあげよう―――近衛の姫君」
 十字架の巨大な刃を翳しながら、楓は木乃香を見下ろして目を細めた。
「つーか、聞き出した後で近衛もエヴァも両方ぶちのめせよ」
 楓にしか聞こえない大きさで携帯から女声が語りかけ、「あいあい」と楓は肯きながら表情は変えない。
「な、何を言っているのだ貴様! そいつは危険だ! 早くトドメを!」
「拙者の仲間が近くにいて、お主を逃がそうと待っているでござるよ」
「……ほ、ほんま?」
 木乃香の問いかけに、首肯する楓。
「…………これ、知ってる? 仮契約カードって言うんやけど?」
 ごく自然な、まるで楓に説明するためのように、木乃香はカードの束を拾う。そして呪文を唱え始めた。知らない者から見れば、仮契約の説明を始めようとしているようにしか、見えない。
「愚か者がぁ! 仮契約カードは従者を―――」
 呼び寄せる事ができる―――、というエヴァの言葉は、最後まで語られなかった。

「………!?」
 楓の前でハルナ・のどか・桜子のカードが鈍く発光し、にやりと嗤う木乃香の顔を照らし出した……。