☆魔法先生ネギま!☆213時間目

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「このちゃん、こっちやよ。一人で早く、ウチのところに来てな―――」
 突然目の前に現れた「ちびせつな」に導かれ、木乃香はループ結界をオートにして、焦ったような顔で階段を駆け上がっていた。
「せ、せっちゃん、何があったんやろう……」
 「立入禁止」と書かれた壊れたドアを破ると、涼しい夜の風が木乃香の頬を撫ぜた。


 学園・屋上―――

「せっちゃん!」
 木乃香のオレンジ色の着物と、長い髪が風に靡く。
 桜咲刹那は屋上の中央で、一糸纏わずにしなやかな裸体を夜の闇に晒していた。
 片手には闇を映して鈍く輝く愛刀、もう片方には呪符の束が握られている。
「このちゃん」
 刹那が微笑んで木乃香を出迎える。
「せっちゃん……」

 二人が向かい合い、距離が縮まり、そして―――

 麻帆良学園の放送網―――スピーカーは学園の広域に及び、学園都市メンテナンス時の停電前の放送などに用いられている設備である。
 他人の心を歌で惑わし、操る美砂のアーティファクト『傾国のマイク』を使うならば、その設備を利用しない手はないだろう。
「さーて、ストレス解消もかねて、思いっきり歌っちゃうよぉ―――」

 円から「ネギ君逃走」との知らせを受けた柿崎美砂はパチッ、パチッ、と放送機材のスイッチをリズムよくONにしながら、カードを「♪」を逆さまにしたような形状のマイクに変え、大きく息を吸い込んだ。
「――――――――――――――――――――――――っ!!!!」

 ネギ君を捕まえて―――
 その願いが込められた美砂の歌声は、麻帆良学園を巨大なコンサート会場に変えながら響き渡り、学園を警備している奴隷化した生徒100人以上に、命令としてその鼓膜を震わせる……。

「危ないっ! や、止めてください―――っ!」
 大音量の歌が響き渡る中、ネギとカモが乗った杖はふらふらと低空飛行で学園の敷地内をさ迷っていた。
 歌声に操られた生徒たちはハルナが創りばら撒いた武器、魔法銃や弓矢などを空に向けて嵐の如き攻撃でネギを撃ち落そうとし、二重、三重の防衛ラインを成して逃亡を阻んでいる。
「兄貴、もっと速く、いや、高く飛んでくれっ! 矢が尻尾に刺さっちまう!!」
「今の力じゃ、これが精一杯だよぉ! え? う、うわああ―――っ!?」
 新手の追手が真上から現れる。その生徒たちはリュックサックのように背負える翼を装備し、ネギの杖に急降下してネギを羽交い締めにし、呪文を唱えられないよう口を塞いだ。
「ラス・テル・マ・ステむぐう! むぐぐ……む、むぅ――っ! ん、ん―――!?」
 杖はジグザグに飛びながら高度を下げ、まるで地獄に引きずり込まれていくように美砂の兵隊が群がる地上へと落下していく。