「直撃したけど弱いよ……。このかちゃんに貰った護符も一枚も減ってないし」
円も呆れたような、いや、エヴァを哀れんでいるように見下ろして言った。
「な、なに……そんな……」
エヴァは愕然として、魔法を放った自分の手を見る。
亜子に噛まれて魔力を奪われ、更に学園の結界の中。
しかし、敵にダメージも与えられないとは……。
「マスターから離れなさい。これは警告です」
解除プログラムを動かしながらも、茶々丸が銃口を円に向けた。
「だってさ。どうするの? マスターさん」
円は釘バットをマントに引っかけてエヴァを吊るし、茶々丸に向けて嗤った。
「あ、マスターさんはお腹が痛くて喋れないのかもね。手加減したんだけど」
エヴァのボンテージは攻撃を受けた部分が破れ、内出血を起こしたお腹が晒されている。
ボンテージ自体が魔法のアイテムで防御力もあるのだが、破られたようである。
エヴァは手足をだらりと脱力させてぴくぴく震えながら、血が伝う口を動かした。
「いかん……茶々丸、お前は、ごほっ、結界の解除に全力を尽くせ……」
茶々丸が結界解除を中断して戦闘に参加すれば、解除は間に合わずエヴァたちはループ結界に潰される。
状況は絶望的だが、不幸な結末の分かっている選択肢だけは選べない。
その時、放送設備を使って大音量で、学園の外部に柿崎美砂の歌が流れ始めた。
「美砂がネギ君捕獲を始めたね。何ていう曲だろ? あ、そうだ。面白い事考えた」
ずむ!
「―――うぐっ! うぐ、あ、あああ゛ぁっ!」
円はエヴァを床に落とすと、バットの先(釘はない)でその華奢な腹部を突いた。
エヴァの小さい身体がくの字に曲がり、手で腹を押さえてブロンドの髪を振り乱す。
胃の中身が逆流して口から漏れ、肺が機能しなくなり呼吸が止まった。苦しい。
「うあ、あ、ああ゛あ゛あ゛……あ゛、あ゛―――」
口から血や唾液や胃液を垂れ流し、目から涙を零して苦痛にのたうちまわる姿は真祖などではなく、暴力に抵抗する手段を持たない脆弱な少女でしかない。
「まだまだこれからだよぉ。マスターさん?」
「あっ……」
バットを放した円がエヴァのブロンドの髪を掴み上げ、「ぐー」で顔を殴り始めた。
「あ゛っ、あうっ、あ゛うっ!」
エヴァは手足をばたつかせて円を蹴ったり叩いたりしているが、円には効いていない。
円の腕が動く度に鈍い音が響き、エヴァの身体は前後、または左右に軽く揺れた。
「マ、マスター! 」
鼻から血が垂れ落ちて、殴られる度にエヴァの顔が歪む。
茶々丸の前で、エヴァは血と涙を散らして綺麗な顔を腫らしていった。
「あ゛っ、はあ゛っ、ぁ……ああ゛っ!」
円がエヴァを髪を引っ張り、ぶちぶちと千切れたブロンドの髪が手に残った。
「助けたかったらどうぞ、茶々丸さん」
円が挑発するようにっこりと嗤う。
「結界解除なんて命令無視しても助けないと、マスターさん、死んじゃうかも。たいぶ障壁も弱くなってるし」
茶々丸はエヴァの命令を守り、決して戦闘には参加してこない。
円は確信して、嗤いながらそう言った。
エヴァの腫れた美顔をぐりぐりと踏み躙りながら、円は釘バットの先をボンテージに覆われた乳房に置いた。
成長を止めた幼い乳房を硬いバットで交互に突いて押し潰し、抉るように回転を加える。
その姿は学ランの学生がフランス人形を壊しているような、かなり異様な光景である。
「あれー? 障壁消えた?」
円はにたりと茶々丸の方を見て嗤うと、エヴァのマントを釘バットに絡めてびりびりと引き裂いた。
「マスター! 先程の命令を取り消し、攻撃命令を!」
「うぐ、う……」
「まだ障壁残ってるじゃん、しつこい!」
股間を締めている黒いボンテージを観察していた円がエヴァの髪を掴んで立たせ、いきなり釘バットで股間を叩いた。