「……あ、朝倉さんが、ぜんぶ、着てきなさいって言ったんだし…。しょうが…ないよね……?」
無意識に、自分に言い聞かせるように声を出すネギ。
スカートの下のトランクスを脱いで、私服の入ったバッグにたたみもせずに詰め込む。
自由になったペニスが、未知の感触に期待してかピクピクと揺れた。
両手で広げた縞のパンツに脚を通してゆっくりと引き上げる。
睾丸、おしり、そしてペニス──と、きゅっと締めつけるような感覚。
「…んぁ……」
不意に、甘い声が漏れる。
ペニスはとうの昔に猛りきっていた。
亀頭の先がパンツからのぞいている。耐えきれずに指先が、伸びる。
パンツごと握りつぶすようにしごきたてられる勃起。
「あ…ふぁ……んぅ……」
ここが公共のトイレだということを思い出し、声を噛み殺す。
それでも漏れ出る喘ぎと、亀頭の先端から滲み出る液。
ちゅ、くちゅ、ぷちゅ……。
借り物の下着を濡らしながら、自慰は続く。
「ひ、っあ、だめぇ、そ…んなぁ……っ」
何を妄想しているのか被虐的な面差しでペニスをしごき立て、
空いた片手で、制服の上から胸を磨り潰すように愛撫する。
「ぼ、僕っ、男なのに…っ、し、紳士なのにぃ……!」
否定の言葉を吐きながら、しかし顔は快楽に蕩け、ペニスを擦る手はより激しさを増す。
「う、うぁ、ぁあっ────!!」
制服を精液まみれにすることは避けられたが、下着はぐちゅぐちゅになってしまったのだ。
手洗い場で水洗いをしてなんとか穿いているのだが、生乾きで気持ち悪い。
思い出すだけでも恥ずかしい。
そして、思い出すだけで感じて…勃ってきてしまう。
「ん……っ」
スカートを持ち上げる勃起で自分が男だとばれないように、両手を股間の前で組んで強く握り締める。
(こ、これなら…女の子の仕草に見えるよね……)
確かに、その容姿は少女に見えた。
だが、それと同時に紅潮する頬が周囲の人間にあらぬ考えをさせていることには気付かなかった。
──お、おい、顔を赤くしてるぜ!?
──喘いでるし、感じてるんじゃないのか!?
──萌え?
──萌え。
そして、駅前で佇む少女がネギだと確信してからそこを動けなくなった千雨もまた、歯噛みしていた。
(……なっ、なんて顔してんだあのガキはっ……!
こんなところでンな顔してたらヘンな野郎共に連れ去られちまうってーの!!)
同時にデブオタに嬲りモノにされる女装ネギの姿を妄想してしまい、顔を赤くする。
(……──ああもう。アイツは…。
ったく、あんな子供でも一応先生だしな。しょうがない、助けてやるか──……)
ヲタク共に視姦されるネギをとりあえずこの場から連れ出してやらねば──、
心の中で悪態をつきながらもそう思った千雨が、人ごみを抜けてネギの場所へ向かおうとした。