「う……うーん……」
明朝から修学旅行明け最初の新聞配達だというのに、明日菜は全然寝付けない様子である。
楽しんだり、普段の勤労学生な身分にすればよい息抜きになるはずの修学旅行が、
友人の親族のいざこざに巻き込まれる形で、日常ではありえない大冒険をする破目となり
度を超した肉体・精神の疲れによって、タフさが身上の彼女でも却って眠れなくなるのも無理はない話。
しかし……。
(……あー、まただ……またネギの事を意識してる…別に今特別に心配してるでもないのに……。)
今の明日菜が寝付けない理由は、前述のとは違う物がありそうな雰囲気である。
(そりゃ確かにカモに言われた手前勢いで本音を吐露しちゃったけどさ……何でだろ、
別に変な事言ったわけじゃないのに……まだ子供なのに凄い勢いで酷い目にあうネギが心配なだけなのに……。)
とくんっ……
(そんな……何で、何で、ネギのこと考えただけで、こんなに心臓がドキドキいうの……。
今まで、高畑先生と会っている時ぐらいしか、こんなにドキドキする事なかったのに……。
今でこそ、ネギのことそんな嫌いじゃなくなったけど……なんかコレじゃいいんちょと同じだよ……。)
いくらなんでも子供を嗜好するのは自分としては如何なものか、そう思った明日菜は
気を紛らわそうとして、ベッドの棚に置いてあるタカミチの写真をじー、と凝視した。
一通り網膜に焼き付けた後は、修学旅行のときに木乃香の実家から貰った
関西呪術協会会長=木乃香の実父の写真を同じように眺めた。
駄目押しにと、パルに奨められて少しずつ読んでいる「○文字D」や「○岸ミッド○○ト」、「ゴ○ゴ○」「バ○」
を物凄い勢いで読み進めたりもした。
(いやだ、もう……こんなに忘れようとしても、ネギの笑ったり、泣いたり、怒ったり、落ち込んだりする顔が出てくる……。
確かに笑っているときは、何か事が成功したのか、素直に嬉しいと思うし、泣いたり怒ったり、落ち込んだときは
自分の剣呑な態度に落ち度でもあったか、クラスの連中に変な話題の肴にされたか、
また何かクラスを巻き込ませたくない事が起きたのか心配になるわよ。でも、でも……本屋ちゃんみたいな感情までは……。)
じゅん……