【空中】テニスの王子様235【お見舞い申し上げます】
(戦友、遠方より来る……!!)←ハシラ文
(タカさんを抱え上げた阿久津。皆で怪訝そうに見上げている)
財前「誰やアイツ……?」
小春「あの制服、確か山吹中の」
蟹「へーえ」
大石「あ…」
カチロー「あ……あ」
「阿久津…………」
(見開きで阿久津のアップ。タカさんの白目顔が少し見える)
(立ち上がれ!! お前にはまだやることがある!!)←アオリ文
Genius331 誰がために戦う
ゴク……(固唾をのんで見守るギャラリー。特に青学一年組は怯えながら)
阿久津「……」
(阿久津、タカさんの顔を見下ろし、不思議そうに眺め回す。かと思うと、突然
右手でタカさんの頬を叩いた。動揺する大石、菊丸、乾。「野郎」といきり立つ
海堂。タカさんの反応がないことを確認し、今度は往復ビンタに切り替える。
呆然とするギャラリー達を尻目にペットボトルのフタを片手で器用に開け、
タカさんの顔面にポカリスエットらしきドリンクをぶっかける。)
タカ「つっ冷たいっ!!……あ、あれ? どうして俺、こんなところに……
(キョロキョロと辺りを見回す)!!あ、阿久津……何で君が?」
阿久津「……」
(タカさんの問いに答えず、タカさんの右手首をねじり上げる。タカさんの顔が
痛みで歪む。そのまま阿久津はタカさんを正面から睨みつける)
阿久津「なめてんのか?お前……」(阿久津アップ。怖い)
タカ「え……? そ、そんな……何言ってんだよ、なめてなんかないよ。
石田さんは強い、だから俺も全力で……」
阿久津「あんな気の抜けた球がお前の全力なわけねえだろうが」
(タカさん、ビクッとなる。石田無表情のまま二人のいるスタンドを見上げる。
審判「早く戻ってきてくれよ〜」と細かいネタコマが入る)
阿久津「河村ぁ……ここがお前らの最後の舞台だろうが……中学テニス最後の、
大事な準決勝じゃねえのかよ。ここで死ぬ気でやらなきゃ、あいつらの言う通り
一生お荷物だぜ?」
(タカさんの目に怒りとともに生気が戻る。その様を見て阿久津、微かに笑う)
阿久津「やっぱ出し惜しみじゃねえか」
タカさん「!!……ハハ、かなわないな」
阿久津「河村。確かにあのツルッパゲは俺ほどじゃないが強い。だがお前だって
まだまだ戦えるはずだ。見てみろよ、あそこでマヌケ面してこっちを見上げて
るお前の仲間達をよ」
(ハッとなりタカさん、青学ベンチを見渡す。そこには心配そうに見守る後輩や
仲間達が。手塚と蟹はいつも通り涼しい顔)
タカ「ハハ……」
(照れ笑いを浮かべるタカさん。その背中を見つめる阿久津)
阿久津(思い出せ、河村……お前はまだこんなもんじゃないはずだ)
(阿久津の回想。阿久津の母・優紀がチンピラに絡まれている。周りの大人達は
見て見ぬふり)
優紀「や、止めて下さい。大声出しますよ!?」
チンピラ「出してみろよ。だぁーれも助けに来やしねえよ」
(下卑た笑い声を上げるチンピラ。堅く目をつぶる優紀)
「や……止めろっ!!」
(すごい大声。二人同時に振り向くと少年時代のタカさんが緊張気味に立っている)
チンピラ「何だぁ?このガキ」
(不用意に覗き込むチンピラ。不意に「バァーニング」と叫んでチンピラに飛びかかる
タカさん。動揺したチンピラとタカさんの取っ組み合いが起こる。暗転)
タカ「ふぅぅぅ」
(ボコボコにされたタカさん。阿久津、無言で彼を見下ろす)
阿久津「ヘボにしちゃ上出来だ……ビビッて逃げ出すかと思ったぜ」
タカ「ハ、ハハ……怖かったよ。でも、おばちゃんが困ってるのを見てたら何と
かしなくちゃって……でも怖くて……ハハ、怖いからよく分かんなくなったよ」
(タカさんドアップでいい顔。阿久津、目を見開く。やっぱり怖い顔。)
(場面転換。優紀の独白。「あの子、頼りないところもあるけどやる時はやるのよ。
あんたみたいに一人で何でも出来る子じゃないけど誰かのために頑張れる、
とっても優しい子よ……あと、おばちゃんって呼ぶの止めさせてよ! そんなトシで
もないんだから」
(回想終わり。遠い目をする阿久津の横で、タカさんがゆっくりと立ち上がる。)
タカ「そうだよな。俺一人だけ楽になるなんて、まだ早すぎるよな……ありがとう」
(ふらつく足元もいつの間にかしっかりし、阿久津の目の前をゆっくりとコート
に向かって歩いてゆく。
目を閉じて「フ……」と息をつく阿久津。)
タカ「阿久津……俺、君に一つだけ言っておきたいことがあるんだ」
(目を開けて、顔を上げる阿久津。背中を向けたままなのでタカさんの表情は読みとれない)
タカ「俺の筆下ろしの相手……優紀ちゃんなんだ」
(阿久津大ゴマアップ。ショックを現すかのようにベタも何もない線画)
(一ページドンとタカさん全身図。すごいいい顔)
タカ「しかも和姦」
(阿久津愕然!!今日からはパパと呼べ!!)←アオリ文