ムヒョとロージーの魔法律相談事務所 ネタバレスレ8
雨が降ってきた中、傘を持たずに走る人がいる道の風景
その建物(事務所)にはペイジのほかにヨイチも来ている
「突然 来ちまってワリーな
そーいや オレ ここ はじめてだな」
ムヒョ「フン オメェは調査漬けだったからナ」
ヨイチ「ハハッ 二年半かかっちまった」
苦笑いしながら、鞄から資料の束を出すヨイチ
「けど やっとエンチューのシッポ つかんだぜ」
『ついに来たんだ』と胸を鼓動を早まらせるロージー
第71条 出発
雨の道を走っていた少年、ケンジは事務所に人の影があることに気付く
『なんだよ タマネギ モヤシ 帰ってんじゃん!
このケンジ様にあいさつ無しとは あいつら〜!』
大喜びで階段を駆け上がるが、事務所の扉は開いている
そっとのぞきこむ形になるケンジ
ヨイチ「単刀直入に言う エンチューは日本にいる
ここが協会 北上することおよそ800q…
人里離れた山間部 五ツの山に囲まれた谷底…
名も忘れられた辺境の地
『琺千峡(ほうせんきょう)』そこに いる まちがいなく…!」
(すみません、「ほうせんきょう」の「ほう」の文字は
本当は口偏に孔子の孔と言う文字ですが
うちにはその文字が出てこないようで、その辺の文字を使わせていただきました
)
緊張と重い空気に包まれる部屋
ペイジ「発見のきっかけは 五嶺が送ってきた書類だったんだ」
(回想・仮眠を取っている今井とヨイチの前に荷物を差し出すペイジ)
「五嶺家で燃え残った その資料は 彼等が独自に調べあげた
日本全国の霊磁気表だった」
(回想・ナナ「霊…磁気?」ヨイチ「磁場みたいなもんだ
強けりゃ強い程 霊を引きつける…!にしても こんなデケェ規模のデータは
初めて見るぜ…!」
ペイジ「手紙だ…『分析途中のものだが 役に立てると思われる
健闘を祈る 五嶺陀羅尼丸』」)
「5000枚に及ぶデータの解析は 4人がかりで30時間かかり
同時刻に 異常な量の 霊磁気を示した 5つの地点を 発見――」
(回想・呆然と発見地点を見る四人、今井「正式名『琺千峡』
又の名を『旧魔法律協会跡地』」
協会は昔一度引越しをしたことがあるのだという
ムヒョ「フンッ 解せねーなぁ 何であのバカ共は そんな所にいる?
何で バカ共が強力な霊磁気を 求めてるとわかったんだ?
説明の順序 間違ってね―か?」
凄みのある表情のムヒョに、写真を見せ、協会が禁書をティキに盗まれた事を言
うヨイチ
そんなこったろうと思ったぜとムヒョ、「禁書…!本でちょっと読んだ事ある
古代からある魔具で 危険なものだから どこかに封印されてるって…」とロー
ジー
ペイジ「文献によると 禁書が作られたのは 650年前
その頃 魔具師は錬金術師と呼ばれ 魔法律家は魔術師などと呼ばれた
黒死病の流布する その時代 錬金術師や魔術師は 悪魔と称され
社会の弾圧を受けた
そんな中 ある錬金術師一家が焼き討ちに遭い 打ちひしがれた父親が一人残っ
た
父親はこの世を呪った その30年後 禁書は完成した
込められた想いは 憎しみただ一つ
錬金術師は その後 霊山に20年こもり
発動に必要な 10万もの霊を収集
その後起きた大殺戮は 歴史から抹消されている
禁書による死者は 500万人におよぶとされるが
黒死病死者 5000万人の中に埋もれたままだ
禁書は協会が回収 回収時 雲間を黒いうねりが去っていったという
言い伝えが残っている
それから600年 書は発動していないが…
一説によると 死者復活の力があるとされている」
険しかった表情をふと変えるペイジ
「―――ここからは 私の憶測と言うか まあ 願望みたいなもんかねぇ…
―――もしかしたら その錬金術師は 伝説のような 憎しみではなく
ただ悲しくて ただ 家族に戻ってきて欲しくて
禁書を作ったとしたら…?」
目を伏せ、愛しいような哀しいような表情のペイジ
「作る気持ちだけなら 分かると思わんか…?
エンチューもリオ君も そんな気持ちで向こうにいてくれたなら
少しは救われるんだけどね
ハハッ 甘い妄想って奴か…」
哀しい目で「いえ そんなこと…」と同意しかけるロージーを
「ケッ!マジで甘々な妄想だな!」と険しい言葉でぶちきるムヒョ
「発動するのに霊魂10万だぞ!?要は10万人の命だッ
作る時点で 頭がおかしい!」
ロージー「でも でも」
ムヒョ「フンッ もういいっ
もし仮にそうだったとしても――
目ぇ覚めるまでブッ飛ばして 連れ帰るまでだがな…!」
ロージー、ヨイチ『開き直った!』
ヨイチ「でも ま… そーゆーことだなッ!」
ロージー「『ムヒョらしいや…!』そーだね…!」
ムヒョ「しかし 禁書か… 確かに10万の霊魂を集めるにゃ あそこしかねー
な
箱舟といい リオといい イモヅル式に ナゾが解けらぁな」
箱舟の事を問うロージー
ペイジ「古くから禁書を狙う 禁魔法律家の 超エリート集団でね
厄介なことに エンチューと手を結んでしまった」
ヨイチ「破滅と復活… 2つの力を併せ持つ禁書を
奴らが使えば結果は一つ 破滅だ
トーマスを欠き 現在6人の箱舟
身元は全員不明
禁書ってとこで 完璧 利害が一致したんだろうな
それと 一番の要因は
リオ先生の存在…!」
ムヒョ「ヒッヒ 優秀な魔具師がいねーと 禁書の封印はとけねーからナ」
ペイジ「写真の封印の状態から 封印のフダを全て剥がすには
最低あと30日を要する
協会側はよっぽど事が公になるのが恐ろしいらしく
協会も最小限 我々の行動も 制限するように とのことだ
封印が解ければ おそらくティキは 10万の霊魂を 殺戮によって集める
そうなれば 地上は地獄と化す
我々には時間がない
我々は 我々だけで 30日以内に 禁書 並びに
エンチューとリオ君を 奪還せねばならない…!!」
険しい表情の四人
外はよりいっそう激しい雨模様となっている
ペイジ「死を賭した 戦いになる… そう思うが ムヒョはどうだ」
ムヒョ「間違いなく こっちに 死人が出る」
息を呑むロージーに、ムヒョは声をかける
「オイ オメェはここに残っていい
元々 巻き込んだ形だしな
こっからは強制しねェ」「イヤだ」
ムヒョの言葉をさえぎるロージー
「今さら 何言ってんのさ!ムヒョの一番悪い癖だよ それ
なんでも背負い込むの…!
確かに 僕はエンチューのこと あんまり知らないよ
でも 会って一言 言ってやりたいんだ
才能に嫉妬する気持ちは分かるし 憎んじゃうのも 少し分かる
でも 天国のお母さんは きっと そんなこと 望んでないはずなんだって…
おせっかいかもしれないけどさ…
それに 魔法律は人を救うもの 僕だって魔法律家のはしくれなんだ!!」
「でしょっ!?」と笑顔を向けるロージーに苦笑い気味の笑みを浮かべるムヒョ
「フンッ 口だけ達者になりやがって…!」
その時事務所のドアが開く
「タマネギのいうとーりだ 甘いぞモヤシ ヒッヒヒヒ〜〜〜」
ムヒョのモノマネをしながら入ってくるケンジ
遊びごとでない空気に舌打ちしつつ、
「んで お前達 また どっか行くわけ?」とロージーに語りかける
「ったく せわしねーやつらだな〜!その内 帰ってこなくなんじゃねーの!?
今生の別れってやつになったりな〜」
ロージーがしんみりと「聞いてたんだね… ゴメン この前はだまって行って―
――」
言いかける額にケンジの帽子が投げられる
「そのボーシ貸してやる!」叫びながら走って部屋を出てゆくケンジ
閉められたドア越しに聞こえる声
「… だからなぁ 絶対(ゼッテー)返しに来い!!
約束破ったら ゼッコーだかんな!!」
雨の中、帽子無しで泣きながら叫ぶケンジ
「ぜってー帰ってこいよ!2人共 帰ってこなかったら
看板の命はないと思え!!」
薄い笑顔で息をつくヨイチ
「――さて これで死ねなくなったな」
ペイジ「絶対帰ってくるために 行くとしようか」
ムヒョ「ヒッヒ 全部 ぶん奪りにな!!」
次回に続く。