どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど。
私の中で道路工事が止まらない。
呆然としているうちに車から下ろされ、
聖さまが、ホテルの人(ドアマンさんとかいうらしい)に車のキーを渡してしまっていた。
去っていく黄色い車。
私が立ち直ったのは、既にロビーに入った後だった。
「ちょ、ちょっと聖さま聖さま、聖さま聖さま聖さま、聖さまったら!」
名前を連呼して、フロントに行きかけたの止める。
そのままロビーの端まで引きずって耳打ちする。
「本当にココに泊まるんですか? 冗談だったら本気で怒りますよ!」
「いいじゃん、なかなか経験できないっしょ?」
「勘弁してくださいよ〜。お小遣い足りるはずないじゃないですか」
ガクガクと聖さまの肩を揺さぶる。
うう、ロビーの豪華さに打ちのめされて涙声になってしまう。
半泣きな私を見て、さすがに聖さまが悪いと思ったのか、ポケットから封筒を取り出した。
「実はね、宿泊ご招待券があるの。今年の初めに親が福引で当てたんだけど、
こんなとこわざわざ泊まりに来ることないし、もうすぐ使用期限が切れちゃうし」
だから、もったいないから使ってみようと言う気になった、とネタばらしをしてくれた。
「でもでも、未成年二人で泊まれるんですか?」
「ああ、予約するときに22歳だって言ってあるから平気」
へなへなと力が抜ける。
聖さまが慌てて支え、近くのソファに座らせてくれた。
「じゃ、私チェックインしてくるから」
堂々とした態度で、フロントに行く聖さま。やがて一人のベルボーイさんを連れて戻ってきた。
「お待たせ。荷物もってもらいな」
「は、はい!よろしくお願いします!」
ボーイさんにガチガチに緊張して、直立不動で話しかけてしまう。
聖さまは、声にこそ出さなかったけど、腹を抱えて笑っていた。
「こちらでございます」
ボーイさんが開けてくれた扉。ドアプレートに"Royal Suite"と書いてある。
いくら英語が平均点な私でもわかる。
これはろいやるすいーとと読むんじゃないのでしょうか。
ということは、この部屋はいわゆるろいやるすいーとるーむなんじゃないでしょうか。
またも呆然としているうちに、ボーイさんは荷物を置いて出て行った。
「おーー、凄いよ、祐巳ちゃん、おいでよ」
部屋の奥から、珍しくはしゃいだ感じの聖さまの声。
つられて行ってみると、その意味がよく分かった。