師走。
2学期の期末試験も終わって、明日から試験休み。
お風呂にも入って、明日はゆっくり寝てようとか考えてたとき、突然リビングの電話が鳴った。
「はい福沢です。あら佐藤さん。ええ覚えていますよ。去年の薔薇さまでらした佐藤さんでしょう?」
ぶっ!
飲んでたお茶を吹きそうになる。っていうか少し吹いてしまった。
なんで? 聖さまから電話? いやな予感がしつつもお母さんと変わる。
『やっほー、祐巳ちゃん、元気?』
ああ、全くちっとも変わってない。
「元気ですよ」
そっけなく言ってみるが、聖さまにはちっともこたえてないようだ。
『高等部は明日から試験休みだよね。明日・明後日暇? 山百合会の現役とOGの交流合宿をしようと思うんだけど』
「急ですね」
また突然何を言い出すんだろうこのひとは。
『うん、急、急』
「どこに行くんですか?」
『一泊だし、近くだよ。私のうちから1時間もかからないところ。お金もかかんないし』
「はあ、」
『ちゃんと泊まれるところだから』
「今年のお正月みたいにまた祥子さまのところに押しかけるなんて嫌ですよ」
『やだなあ祐巳ちゃん。私を信じてくれないの?』
「信じられますか」
お金がかからない宿泊施設ってことは、リリアン学園の研修所かなんかだろうか。
由乃さんが剣道部の合宿で行ったって聞いた事ある。
「他に誰が来るんですか?」
『さあ、祐巳ちゃんに一番に話してるから、まだよく分からない』
「う〜ん」
聖さまのことだ、きっと何か裏がある。
でも、OGとの交流会ってことは蓉子さまや江利子さまが来るかもしれないし…。
「行きます。ちょっと待ってください。親に聞いてみます」
『は〜い、待ってるよん』
私はお母さんから宿泊許可を貰い、明日の待ち合わせ場所と時間を決めて電話を切った。